JAZZピアノ・トリオ名盤500/寺島靖国
2018/01/11
書店のジャズコーナーを覗くと、覗くたびに平積みが減っているので、売れ行き好調なようです、寺島靖国氏の最近の新刊『JAZZピアノ・トリオ名盤500』。
かれこれ2年ぐらいお会いしていないけれども、元気かな?
今年も、昨年も寺島さんからの年賀状には、「ねぇ、最近どうしてるのよ、たまには吉祥寺に来てよ」と書いてありましたが、ハイ、そのうちお邪魔します。
そう、寺島靖国氏は、吉祥寺のジャズ喫茶「メグ」のマスターなのです。
とはいえ、最近はジャズ喫茶と言っていいのかな? ジャズバー? ジャズのライブハウス?
この本をパラパラとめくると、結構、寺島さんの趣味と私の趣味、(一部だけど)かぶるところがあるんだよね。
たとえば、バリー・ハリスの『ブレイキン・イット・アップ』。
このアルバム、私もいたく気に入っているし、ウォルター・ビショップJr.の名盤『スピーク・ロウ』では《アローン・トゥゲザー》が一番のお気に入りだとか。
まぁ500枚もピアノトリオのアルバムを挙げているのだから、趣味や好みがかぶることはアタリマエのことなのかも。
きっと本書の狙いは、バイヤーズガイドとしての目的の他に、「うんうん、分かる、分かる」、「そうなんだよなぁ、オレもそう思うよ」と、ジャズファンに膝を叩かすところにあるのではないのだろうか。
共感者がいる。
同じことを適切な表現で語ってくれる人がいてくれると、嬉しいものですからね。
「ジャズ好き」って、こういう小さなことに喜びを見出すものなのですよ(それってオレだけかな?)
ディスクガイドとしてよりも、「エッセイスト・寺島靖国」の文体を堪能したい本だ。
特に、音楽レビューを書いているような私のような輩にとっては、彼の文体、レトリックなどは刺激になる。
制約のある短い字数の中で、お気に入りのアルバムのエッセンスをどう封じ込めるか。「耳」以前に「文」の達人が挑んだ真剣勝負500本。
推敲を繰り返し、余分な文字をバッサリと切り捨てたであろう短文。歯切れよく、サクサクとこちらに伝わるリズム感。しかも、この中に氏の思いのたけが凝縮されている。さすが、プロの仕事だ。
とにもかくにも、相変わらず、評論家というよりもエッセイスト的なノリの軽やかかつ洒脱な筆致。「そうそう」と思ったり、「えー、そうかなぁ?」と感じたり、ある程度の予備知識のあるジャズ好きにとっては、「読み物」として楽しんで欲しい本だ。
私のように、氏の薦めるアルバムはまったく関心が無いし、買う気もおきないけれども、氏の文章が好きなファンが多いのも頷ける。
あと、ジャズとはまったく関係ないのだけれども、というか、アドリブ、即興の要素の強いジャズとはまったく逆の発想の本の紹介なんだけれども、雑誌『LEON』の編集長・岸田一郎氏の本が面白い。
LEONの秘密と舞台裏 カリスマ編集長が明かす「成功する雑誌の作り方」
広告コピーや、雑誌のタイトル、キャッチフレーズは「気分」や「思いつき」だと思っている人は、是非読んで欲しいと思います。
目からウロコかも。
べつに、出版や「ギョーカイ」に関係ない職種や、興味のない人でも、仕事や発想のヒントになることが一杯詰まっているんじゃないかな?
寺島本と岸田本を読んで、ちょいワルなオトコになろう!(なれません)
記:2006/02/15