すごい!「バーザム特集」を組んだ『モデル・グラフィックス』誌
2021/02/08
バーザム特集!
今回の月刊『モデルグラフィックス』(以下「MG誌」)の特集は、なんとバーザム。
ゼータガンダムに登場した地味なモビルスーツ(以下「MS」)ですね。
先日、バンダイからHGUCでバーザムのキットが発売されたことが大きな理由なのでしょう(発売日に売り切れ店が続出したという話も聞きます)。
また小説や漫画などでは様々なバリエーションが登場するため(バーザム改、バーザムIIなど)、コアなマニアの心をくすぐるMSでもあるから、特集するに足るMSだと編集部は判断したのかもしれません。
しかし、それにしても、よりによってバーザムですよ、バーザム。
あの「地味機」のバーザムで大特集を組んでしてしまうなんて、さすがMG誌!
ジャズ雑誌で言えば、ジジ・グライス特集を組むよりも思い切った大英断なのかもしれません(笑)。
MS界のイマイチ君
バーザムって、『機動戦士Ζガンダム』の劇中では、本当に地味で印象に残らなかったMSなんですよ。
一応、ワタクシ、ゼータガンダムは、テレビ盤は全話観ましたし、映画盤も三本とも観ています。
しかし、うーん、あんまり印象に残っていないんだよなぁ。
ジェリドやヤザンのようなキャラ立ちしたパイロットが乗らなかったからというのも大きな理由なのかもしれません。
敵でも味方でも無名のパイロットが操縦しているMSって、どうしても「その他大勢」に見えてしまいますからね。
しかし、「その他大勢」だとしても、ジムやボール、「ゼータ」だったらガザCのように大量に登場する場面があれば、それはそれで存在感も出てくるし、見ている人の記憶には残るものです。
しかし、バーザムはティターンズの量産機という設定ながらも、同形機たちが大量に登場したわけでもない。
これが記憶に残らなかった一員でしょう。
MG誌には、マラサイと並んでポツンと立っている劇中のバーザムの画像が掲載されていますが、どう見てもマラサイの方がカッコいい。
そう、バーザムは、あまりカッコ良いMSではないのです。
少なくとも私はそう思っています。
(もっとも、今回発売されたバンダイのキットの作例の画像をみると、角度やポージング次第では、カッコよく見えるものもあるにはあるのですが)
青い機体に、黄色のアクセントカラーは、ヒーローっぽい目立つカラーリングと言えるでしょう。
しかし、ガンダムMk-IIをベースにしているという設定でありながらも、ガンダムMk-IIの面影はなく、むしろ、わざとMk-IIをカッコ悪くしているかのようなデザインにしか見えないのです。
Mk-IIを軽量化、簡略化していると設定のわりに、頭の上のニワトリのトサカのような物体は、果たして軽量化に貢献しているのだろうかという疑問も芽生えてしまいます。
また、股間のスラスターも、まるでオティンティンからオシッコを噴射するかの如くのデザイン。
姿勢制御的には実用的な設定なのかもしれませんが、パッと見的には「なんだかな〜」とため息をつきたくなるようなイマイチ感が漂います。
マイナー機にスポットを当てる姿勢に拍手!
そんなバーザムをキット化したバンダイさんも凄いですが、大型特集を組んでしまうMG誌のセンスも素晴らしいと思います。
私個人の好みとしては、バーザムは「いまひとつ好きになれないMS」なのですが、このような通好みの機体にもスポットをあてて、特集をするという姿勢そのものが、本来の趣味の雑誌の正しいあり方だと思います。
アニメだったら、ガンダムやマクロスの主役級の機体、スケールモデルだったら大和や零戦やタイガー戦車ばかりを取り上げていれば良いというわけでもないでしょう。
もちろん、このような人気機種を特集することはたまには必要かもしれませんが、人気の機体よりも、むしろマイナーな機体(車輌)にスポットを当てることで、多くのモデラーに、そのメカの魅力や、そそる作例を提示することが模型雑誌の姿勢としては大事なことなんじゃないかと私は思います。
もちろん、発行する側としては、その号の売り上げや採算の問題など、様々な障壁がある中で魅力的な企画を日々考えているのでしょうが、だからこそ、そのような中で、あの「地味機」バーザムに光を当てる特集を組んだMG誌には拍手を送りたいのです。
特集冒頭に記された、今なぜバーザムか、バーザム発売から見たZガンダムや、Zガンダムのガンプラの現状の考察なんかは、まるで文系社会学を専攻している学生の論文の出だしみたいで、なかなか楽しいですよ。
こういう遊び心が良いですね。
しかも、バーザムを改造した作例が滅茶苦茶カッコえぇ~!のです。
バンダイの開発者を取材したりと、たかがバーザム、されどバーザム!
バーザムの特集をやるからには!という編集部の気迫がヒシヒシと伝わってくる!
そう、バーザムの特集なのに(失礼!)、特集の内容は無駄に濃いのです。
あ、もちろん褒め言葉ですよ。
HOBBY誌なんですから、ポップにエンタしてくれちゃっているところが、やっぱりホビー誌本来の有り様なのじゃ~!
……なんて思いを抱く私は、やはり松本州平氏が大暴れしていた頃の古き良き『HOBBY JAPAN』誌のテイストを無意識に模型雑誌に求めているのかもしれません。
参考記事:HGマラサイ改修レビュー
記:2017/06/28