キル・エム・オール/メタリカ
荒削りで凶暴な音・レコードのザラついた音
メタリカは、高校時代から大好きなバンドの一つだ。
最初に聴いたのは3枚目のアルバムの『マスター・オブ・パペッツ(邦題:メタル・マスター)』だった。
これを最初に聴いた時は、頭を「ガツン!」と殴られたような衝撃を覚えたものだが、ここから引き返すように急いで1stと2ndを聴いたら、「なんだ、こっちの方が凄いじゃん」。
いや、音楽的なスケールの大きさや、深みなどに関しては、断然3枚目のほうが勝っているんだけど、ゾクゾクとこちらに迫ってくる感じ、特にファーストアルバム『キル・エム・オール』の荒削りな凶暴さ、スピード感には心底マイってしまった。
当時はレコードで買ったのだが、それこそレコードの溝が擦り切れるまで繰り返し聴いたものだ。
いや、レコードは安い輸入盤だったためか、最初から音が擦り切れていたようにも思うが(笑)、輸入盤特有の音が痩せていて奥行きがなく、なんだかザラザラした音の質感が、かえってこのアルバムのサウンドが持つヤバさに拍車をかけていたように感じる。
だからこそ、CDで買い直して聴いた時の音質の差には驚いたものだが、やはり私にとっての『キル・エム・オール』は、あの痩せた音質でヒステリックなノイズまじりの割れたギターの音質が、今でも頭の中に再現される。
30年以上アドレナリンを出させ続けるアルバム
今聴くとかなり強引な展開のナンバーが多く、ジェームス・ヘットフィールドのヴォーカルも金切り声的なシャウトが多いのだが、だからこそ、この青臭さ、切迫した感じが、いつ聴いてもヒリヒリとした爪痕を耳の奥に残す。
最初は、《ヒット・ザ・ライト》や《ファントム・ロード》、《メタル・ミリティア》などのスピード感のあるナンバーにゾッコンだったが、次第にクリフ・バートンのワー・ワー・ペダルを駆使したベースソロナンバー《(アネシージア)-プリング・ティース》や、執拗にたたみ掛けるリフが滅茶苦茶カッコ良い《シーク・アンド・デストロイ》のようなナンバーに惹かれていった。
特に、《シーク・アンド・デストロイ》は、今でも私のフェイヴァリット・ナンバーで、近所を散歩しながら「脳内仮面ライダーごっこ」をしている時や、ガンプラを作っている時など、この曲のリフを頭の中に流して一人で興奮していたりしている。
……アホですね。
普段は物静かで大人しく、無口な陰キャラな私(?)ですら、興奮の坩堝に陥れてしまうメタリカの楽曲には、新旧問わず、交感神経を強引に興奮させ、強制的にアドレナリンを放出させるサムシングが常に備わっているのだ。
もちろんこの要素は、時期やアルバムによっても差はあるが、やはり私の場合は、初期の3枚に、この要素を強く感じる。
中でも、ブレーキが壊れた車が暴走するかのようなゾクゾクとしたスリルを、歳月とともに風化することなく味あわせてくれる『キル・エム・オール』というアルバムは、時代を超えて、本当に凄いアルバムなんじゃないかと、発売されてから30年以上経った今、改めて思い直しているところなのだ。
記:2017/06/30
album data
KILL'EM ALL (Megaforce)
- Metallica
1.Hit the Lights
2.The Four Horsemen
3.Motorbreath
4.Jump in the Fire
5.(Anesthesia)-Pulling Teeth
6.Whiplash
7.Phantom Lord
8.No Remorse
9.Seek & Destroy
10.Metal Militia
James Hetfield (vocals, rhythm guitar)
Kirk Hammett (lead guitar)
Cliff Burton (b)
Lars Ulrich (ds)
1983/05/10-27
Producer:Paul Curcio