濱瀬元彦『テクノドローム』の秀逸トラックは《Moriana》だ!
アルバム『Technodrome』のベストトラック
ベーシストであり音楽教育家でもあるフレットレスベース奏者・濱瀬元彦のソロアルバム『テクノドローム』のベストトラックは、個人的には《Moriana》だと思っている。
まず、バックのトラックが秀逸。
そして、ベースが雄弁。
両方とも籠った音出し、このナンバーが収録されている『テクノドローム』というアルバム自体、全体的にコモッた、というか曇った音像のアルバムなのだが、その「曇りっぷり」が良い具合に作用しているのが《Moriana》なのだ。
1分過ぎたあたりで挿入される位相がズレた金属的かつエスニックなアルペジオも効果的。
そして、ランダムにズア~と挿入される荘厳(っぽい)和音も効果的だ。
私は濱瀬元彦のベースプレイは、自称しているるほどテクニシャンだとは思わない。
それに、複雑なフレーズを弾いてはいるのだが、彼特有の常套句というか手癖というかクリシェが時折鼻につく。
もちろん、手癖フレーズが悪いというわけではない。
チャーリー・パーカーにだって、ジャコ・パストリアスにだって「いかにもパーカーだ(ジャコだ)」と思わせる手癖フレーズはあるし、それが彼らの個性となっている。
しかし、チャーリー・パーカーやジャコ・パストリアスの手癖フレーズはカッコ良いのだが、残念ながら、濱瀬元彦の手癖フレーズは、なんとなく野暮ったい。
きっと生真面目な性格のベーシストなのだろう。
パーカーやジャコのような良い意味でのハッタリ的なことで場を盛り上げることは潔しとしないのだろう。
しかし、そのベースプレイが良い方向に奇蹟的に結実しているのが『Technodrome』の《Moriana》なのだと思う。
ちなみに、この演奏のソロベースパフォーマンスも、エコー(ディレイ?)をバリバリにかけているが、どういうわけか、『テクノドローム』の他のナンバーほど違和感はない。
こういうナンバーを聴くと、濱瀬元彦という音楽家は、プレイヤーとしてよりも音響アーティストとしてのほうが優秀なのではないか、そう感じさせる1枚が『テクドローム』の《Moriana》なのだ。
記:1999/10/03