職業としての小説家/村上春樹
体力つけなくちゃ
村上春樹氏の新刊『職業としての小説家』。
新宿紀伊国屋本店にて複数のフロアで多面展開されており、面陳がいやでも目立つ、アラーキー撮影のカッコいい表紙。
それにしても、どういうポーズを取っているんだろう?
そう思わせるところが、なんかジャズっぽいですよね。
ポーズの意味や意図がよく分からないんだけど、なんだか強烈に説得されてしまうような。
たとえば、ホレス・シルヴァーのアルバムとかね。
Horace Silver Trio (Rudy Van Gelder Edition)
それとか、ジョン・コルトレーンの『ブルー・トレイン』とか。
もっとも、このジャケ写のコルトレーンは、意味深なポーズと表情に見えますが、録音の合間、スタジオで、後ろに手を回して、ミントキャンディを舐めているだけの写真なんです。トリミングされる前の写真を見ると。
それをアップでドドーン!と迫力の構図にすると、なんだか哲学的な雰囲気も出てくるから不思議なものです。
それはそうと、春樹氏の新刊、現在読み読み中ですが、うーん、メチャクチャ面白い!
国分寺ならびに千駄ヶ谷のジャズ喫茶「ピーター・キャット」の頃のエピソードが読ませますね。
すごく大変だったんだということが、すごく伝わってきます。
同時に、楽しそう、というか何にも縛られることなく自由な生活でもあったということも伝わってきます。
そのような中、奥さんと共に実直に生きてきた若かりし日の村上氏。
ある日突然、ヤクルトの試合中に「小説家になれるんじゃないか」と天啓に近いものを受けるまでのエピソードが、とても面白く読めます。
あと、オリジナリティに関しての話も。
これ、ジャズにも通ずる話ですよね。
ま、ジャズ好きの春樹氏のこともあり、ジャズマンが引き合いに出されていますが。
なんだかこの調子だと一気に読み終えてしまいそう。
ノーベル文学賞に関しての話は、毎年シーズンになると「今度こそ受賞か?!」と騒がれ、話題になる村上氏ですが、どうもこの章を読むと、騒いだり期待しているのは、周囲のファンだけのようで。
(あくまで書いてあるとおりならば)本人は、周囲の温度ほど熱くないようですね。
村上春樹の本に関しては、いつものことなんだけど、面白いから一気に読んでしまいたい自分と、モッタイナイからじっくり味わって読みたいと考えている自分が脳の中で鬩ぎあうのです。
結局、毎回「一回読んでから、またじっくり味わって読めばいいじゃん」と、一気に読んじゃえ派の勝利に終わるのですが。
いろいろなエッセイで触れられていることではあるのですが、小説家には体力が必要ということが嫌というほどよくわかります。
とにもかくにも、今の気持ちは、もっと健康にならなきゃ、ジョギングしなくちゃ、体力つけなくちゃ!です。
きっと「思うだけ倒れ」に終わってしまうんだろうけど……。
記:2015/11/04