キープ・スウィンギン/ジュリアン・プリースター
抜刀侍のとごき構え
抜刀した侍が、どこからでもかかってこいや!といわんばかりの佇まい。
まるでトロンボーンが刀に見えてしまう、カッコいいポーズでこちらを見据えるトロンボーン奏者、ジュリアン・プリースター(後ろの拳闘士みたいな人は謎だけど)。
彼が24歳の時に、リヴァーサイドに吹き込んだ初リーダー作『キープ・スウィンギン』は、彼のトロンボーンの魅力をたっぷりと楽しめるアルバムだ。
多彩な共演者
ジュリアン・プリースターといえば、マディ・ウォーターズ(vo,g)やダイナ・ワシントン(vo)と共演した後、マックス・ローチ(ds)にコルトレーン(ts)、サム・リヴァース(ts)、そしてグループで言えば、サン・ラ・アーケストラにデューク・エリントン楽団、そしてハービー・ハンコックの初期の「ヘッドハンターズ」にも在籍するなど、多彩かつ華麗なキャリアの持ち主だ。
皆、かなり濃い個性的な面々。音楽性もぜんぜん違う。
そんなアクの強い個性を持つリーダーたちの要望に応えるだけの柔軟性を有したツワモノといえよう。
そんな彼がトロンボーンで陣頭に立つとどうなるのか?
これがまた、なんともコクのある味わいなのだ。
良い意味で、ネッチリとした粘り気がある。
アンサンブルに厚みをつけ、ハモりのメロディを吹くことで主旋律を下支えする役割の多いトロンボーンという楽器だが、J.J.ジョンソン、ならびにカーティス・フラーやグランシャン・モンカーIII世などトロンボーン奏者たちの演奏を聴けばわかるとおり、トロンボーンだって立派に主役を張れる楽器だということがわかるし、彼ら一人ひとり、まるで別な楽器なんじゃないかと思うくらい、個性が異なる。
ジュリアン・プリースターのトロンボーンは、ざっくりとだが、ちょうどJ.J.ジョンソンとカーティス・フラーを足して2で割った感じのニュアンスか。
シャープさと野暮ったさの配合具合がとても心地よく、歌心と、それを成立させるためのテクニックが良い具合に共存しているといえる。
中低域を際立たせるフレージングも心得ており、プレイヤーとしてのみならず、自らの立ち位置を心得た目線もきっちりと持ち合わせていると感じる。
このトロンボーンに、シャキッとした歯ごたえのあるリズムセクション、すなわちトミー・フラナガン(p)が堅実なバッキングをほどこし、躍動感あふれるリズムをサム・ジョーンズ(b)とエルヴィン・ジョーンズ(ds)が作り出すという寸法。
非常にバランスの良い仕上がりの作品となっている。
記:2019/07/12
album data
KEEP SWINGIN' (Riverside)
- Julian Priester
1.24-Hour Leave
2.The End"
3.1239A
4.Just Friends
5.Bob T's Blues
6.Under the Surface
7.Once in a While
8.Julian's Tune
Julian Priester (trombone)
Jimmy Heath (tenor saxophone) #1,2,4,6 & 7
Tommy Flanagan (piano)
Sam Jones (bass)
Elvin Jones (drums)
1960/07/11
YouTube
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