スピリチュアル・ユニティのサニー・マレイ
2017/05/21
アイラーの絶叫に近い“肉声”に魅せられ、ノックアウトされていた自分がいたが、どうも、このアルバムだけは、ほかのアイラーとは肌触りが違うということに、最近気が付いた。
音の過激さと同時に柔らかさも常に兼ね備えているアイラーの“肉声”は、どういうわけか、このアルバムに限っては限りなく“硬い”のだ。
気が付くキッカケは、サニー・マレイのドラミングにまで耳が行くようになってから。
このアルバムの演奏、最初はアイラーの咆哮に最初は耳を奪われるが、だんだんサニー・マレイのシンバルのヤバさに耳が移行してくるのだ。
セシル・テイラーのカフェ・モンマルトルのライブでのプレイもそうだが、彼のシンバルワークは限りなく細かい。
分子レベルにまで分割されたビートが再構築され、巨大なウネリと高揚感を出すかのごとくだ。
アイラーは、彼のドラミングに煽られ、急き立てられているのではないのだろうか?
もちろん良い意味で。
それにプラスするように、ゲイリー・ピーコックの硬質かつダークなベースも、いつもと違うアイラーを引き出すのに一役買っていると思う。
過激な中にもオトボケの要素があり、だからこそ、魅力のあるアイラーのテナーだったが、『スピリチュアル・ユニティ』では、彼の中のニコヤカな表情が陰をひそめ、ひたすら嵐のようにテナーを吹き鳴らす鬼神に変身している。
それこそ“なにか”に取り憑かれたように。
その“なにか”の正体は、おそらく、サニー・マレイのドラムだ。
しかし、こんなに凄いドラマーでも、世間の評価は冷たい。いや、すでに忘れされているのか、あるいは、最初から認知されていないのか。
ニューヨークの街角の一角には、
「ドラム、教えます サニー・マレイ」
という張り紙が。
現在の彼は、細々とドラム教室で生計を立てているようだ……。
記:2006/02/07
album data
SPIRITUAL UNITY (ESP)
- Albert Ayler
1.Ghosts :first version
2.The Wizard
3.Spirits
4.Ghosts :second version
Albert Ayler (ts)
Gary Peacock (b)
Sunny Murray (ds)
1964年7月