アフィニダッド/デヴィッド・ビニー
ベネズエラ出身のピアニスト
Afinidad(アフィニダッド)は、スペイン語で「親和性」という意味なのだそうだ。
南国、しかし物憂げな南国のイメージを連想させるジャケットのイラストが店頭で目を惹いたデヴィッド・ビニーの『アフィニダッド』。
ストレートアヘッドなコンテンポラリージャズ的な演奏もあるが、中にはジャケットのイラストどおり、ビニーのアルトサックスと、エドワード・サイモンのピアノのデュオのナンバーには、クールダウンした南国テイストの演奏もある。
歯切れよく、音に奥行きを感じるピアノの主、エドワード・サイモンは、調べてみるとベネズエラ出身のピアニストで、このアルバムのコ・リーダー的存在でもある。
豊かな音楽性を持つこの2人のコンビが形作る、曲群は、最初から最後まで退屈させない内容に仕上がっており、親しみやすさと微量のミステリアスさが含有されているためか、何度でも再聴に耐えうる内容となっている。
フィル・ウッズ的な思い切りの良さ
デヴィッド・ビニーが吹くアルトサックスは、フィル・ウッズを彷彿とさせる。
明快、ストレート、思い切りが良い。
彼はウッズのほか、ジョージ・コールマンやデイヴ・リーブマンにも師事していたという俊才だが、彼の演奏に向かう潔い姿勢はフィル・ウッズを強く感じる。
特に、スケールの大きな枠組みを構築する一方、細部においては気配りの小技も光る ブライアン・ブレイドがドラムで参加しているナンバーでは、エネルギッシュでバイタルなサックスを存分に吹くため、小細工無しの心地よさが感じられる。
その一方で、スローテンポで奏でられるピアノとのデュオにおいては(《シンプリシティ》や《サッドネス》など)、滑らかで潤いのある吹奏で、しっとりと味わい豊かな演奏を楽しませてくれる。
この表現レンジの広さが、デヴィッド・ビニーの持ち味だ。
言いたいことは山ほどある、しかし、のべつ幕無しに吹きまくるのも野暮だ。
おそらくは、これがビニーの美意識なのだろう。
勢いと同時に、トータルに演奏全体を見渡すクールな視線も持ち合わせており、この資質が、同様な美意識を感じるエドワード・サイモンと見事に共鳴をしている。
都会的なラテン
曲によっては、アダム・クルツのパーカッションや、ルイカ・クルツのヴォイスが参加しているが、このアルバムの謳い文句ほど、ストレートなラテンジャズではない。
ラテンジャズというとどこか陽気、もしくはドが付くほどマイナーな旋律をイメージしがちだが、彼らが参加したラテンナンバーは、そのどちらにも当てはまらない。
あくまでクールで透明感のある、少し沈んだナンバーだ。
特に《アグアンタンド》のような内省的なナンバーは、ラテン嫌いの方でも安心して聴けるのではないだろうか。
また、《ミ・クェレンシア》も、テーマのメロディはラテン色が漂うが、ピアノソロになると、もう「もろジャズ」としか言いようのない演奏だ。
ビニーのサックスは当然のことながら、徹頭徹尾、参加ミュージシャンたちのクールな眼差しを感じ取れる「都会テイストのラテンジャズ」を楽しむことが出来るアルバムでもあるのだ。
記:2019/04/13
album data
AFINIDAD (Red)
- David Binney,Edward Simon
1.Red
2.Civil War
3.Pere
4.Aguantando
5.Vidala
6.Sadness
7.Mi Querencia
8.Simplicity
9.Reflecting
10.Red Reprise
11.Remembrance
David Binney(as)
Edward Simon(p)
Scott Colley(b)
Adam Rogers(g)
Brian Blade(ds)
Adam Cruz(per)
Lucia Cruz(voice)
2000/04/14
YouTube
動画でも、このアルバムの魅力を語っています。