AKB48とニッポンのロック~秋元康アイドルビジネス論/田中雄二

   

AKB48とニッポンのロック ~秋元康アイドルビジネス論

表紙がズルい!(笑)

なにしろ、表紙が『テクノデリック』のジャケットアートですからね、ズルい!(笑)

私を含め、コアな「YMO残党」の目を惹くに充分。

その上、オビの言葉が近田春夫ですから、これも邦楽(死後?)マニアの琴線に触れることは必至でしょう。

もう完全に読者層を、80年代に音楽の青春時代をおくったオジサンたちをターゲットにしていることは明らかですな。

かなり分厚く700ページの力作。
読むのは大変だけど、というより時間はある程度かかりますが、そんなこと気にならないほどの考察、記述が次から次へと続く。

私はとんねるずの『仏滅そだち』で、秋元康氏の類まれなるセンスと遊び心にノックアウトされたクチですが、言うまでもなく氏は、美空ひばりの《川の流れのように》から、おにゃんこクラブ、AKB48(AKBグループ)と、常に日本の音楽カルチャーの中心部にいる(いるように見える)大物であることは間違いありません。

『仏滅そだち』の佐野元春の『Visitors』をパロッた《Shikato》はかなりの名曲だと思うんですけどねぇ。

それは本気を出さない遊び心、ある意味「余力」だけでも、これほどまでのことをサラリとやってのけちゃうという溢れんばかりの才能の証でもあるわけだけど。

あと、高校時代につきあっていた子が稲垣潤一好きだったということもあり、借りて聴いたLPに収録されていた《ドラマティック・レイン》の歌詞も秋元康でしたね。

このように、とくにアイドルや歌謡曲を熱心に追いかけていた私ではなくても、気分転換に聴いていた音楽の風景のその片隅には必ず「秋元」という文字が傍らに横たわっていたことをそういえば思い出します。

しかし、日本の音楽シーンは秋元康によって牽引されていたのではなく、時代時代の日本の空気が、いや、その時々の日本の「庶民」たちのニーズをいちはやく感知し、それを具現化できるだけの類まれなる才能の持ち主が秋元康氏だったということなのでしょう。

とにかく力作。

AKBグループやアイドルに疎い人も読む価値アリの力作です。

懐かしい!
ああ、そういえば?!

そう感じながらページをめくるオジサン音楽ファンも多いのではないかと想います。

記:2018/08/05

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