アキサキラ/セシル・テイラー
山下洋輔も見に行ったライヴ
セシル・テイラーは、好きなピアニストなので、なるべく彼のアルバムには耳を通すようにはしているが、よっぽどの覚悟で臨まないと、押しつぶされてしまう作品も多い。
その筆頭候補がこれ。『アキサキラ~セシル・テイラー・ユニット・ライブ・イン・ジャパン』だ。
文字通り日本で行われたライブを収録したアルバムで、1973年の彼の来日時、5月22日の東京厚生年金大ホールでのライブの模様が収められている。
山下洋輔の著作、たしか『ピアニストを笑え!』だったと思うが、彼もこの時の来日公演を見に行っているようで(たしか場所と日時は違っていたと思うが)、セシル・テイラー・ユニットの圧倒的な演奏に関してのエッセイを綴っていた。
かなりの集中力を要する
2枚組のCDだが、演奏曲はたったの一曲。怒濤の83分!
これは、とてつもない演奏だ。
スケールが大きい。
たった3人の演奏から生み出される巨大なスケールの音楽に、私の場合は、ただ打ちのめされるしかない。
とにかく、演奏時間が長い上に、聴く上でもかなりの集中力を要するので、弱っちい私は、通しで最初から最後まで聴いたことって、実はほんの数回しかない……。
ディスク1から2に取り替える段階で、「もういいや」とギブ・アップしてしまう自分が、ああ、情けなや……。
聴くだけでも、それぐらい体力と神経が消耗するというのに、演奏をしている側のセシル以下、アルトサックスのジミー・ライオンズとドラムのアンドリュー・シリルのバイタリティといったら…。
後半になるほど凄くなる
ジミー・ライオンズは、テイラーのソロになった時はサックスを休めるので良いとしても、テイラーとシリルの二人は、なんというか、演奏が進めば進むほど、ますます凶暴にパワーアップしていくので、恐ろしい。
特にテイラーは後半になればなるほど、ピアノを打鍵する速度がアップしてゆき、音符の刻みが、驚くほど細かくなってきている。
特に、ディスクの2枚目になってからのソロのほうが凄い。
しかし、このコンサートを観に行った山下洋輔のエッセイによると、このときのテイラーは姿勢を崩さず、汗もかかずに…というようなことが書かれていたと思うので、一体この人はどういうカラダの構造になっているのだろうと思ってしまう。
最初から最後まで、本当に息をつく暇もないほど高密度で、圧倒的な演奏。
「音のウルサさ」と「音の迫力」においては、これを上回るテイラーのアルバムはたくさん出ているが、私がこのアルバムが好きな点は、ただ単純に音の迫力で「ガーン!!」とやられるでけではなく、聴きながら、リアルタイムで様々なことを聴衆に考えさせる部分があるからだと思う。
私はこのアルバムのジャケットも好きだ。
煮えたぎっている水銀だなんて、すごく秀逸なアイディア。
そのまま、演奏の内容を象徴しているようだ。
記:2002/07/06
album data
AKISAKILA (Crown)
- Cecil Taylor
1.Bulu Akisakila Kutala 1(CD-1)
2.Bulu Akisakila Kutala 1(CD-2)
Cecil Taylor (p)
Jimmy Lyons (as)
Andrew Cyrille (ds)
1973/05/22
東京厚生年金大ホール