『青き炎』の海津龍一と『DINO』の杉野ディーノ

   

『青き炎』一気読み

先日、本を整理していたら、その流れで柳沢きみおの『青き炎』を全巻一気読みをしてしまった。

結局、本の整理は中断。よくある話ですね。

これ面白いんだよね。
ダークヒーローのピカレスクロマン。

柳沢きみおの作品の中では、『DINO』と同列に並ぶダークな作品だが、この2つが個人的には好き。
バブル後期、あるいはバブル崩壊直後の日本(主に東京)が舞台の作品だね。

柳沢きみおの作品はギャグもあったり、恋愛ものもあったりと、自称「粗製乱造斉」と名乗っているだけのことはあり、様々な作品を発表しているが、個人的には、やはりこの手の『青き炎』や『DINO』のような作品が好きだ。

DINOの場合は父親の復讐という明確なモチベーションがあるが、『青き炎』の主人公の海津龍一の場合は、とにかく「金、金、金」。

徹底して悪なところがかえって良い。

正直、柳沢きみおは絵が下手だし、手抜きの描写もあったりで、「絵」としての完成度はそれほど高くないのだが、それを上回るストーリー展開や切り口のユニークさがある。

だから引き込まれてしまうのだろう。

これ、ブログやサイトにも言えることかもしれない。

レイアウトに凝った綺麗なサイトよりも、その中に書かれている情報、内容の面白さが大事だということを柳沢作品は教えてくれる。

もちろん、絵(レイアウト)は綺麗なことにこしたことはないが、そちらのほうにばかり気が回ってしまうと、本末転倒になってしまうということだ。

『DINO』一気読み

そして、その勢いで、『青き炎』と似たテイストの作品『DINO』も12巻一気に読み倒した。

これで何度目だろう。

10回目くらい?

学生時代は『ビッグコミックスピリッツ』で毎週リアルタイムで読んでいたから、もうセリフも覚えてしまうほど読み込んでいる。

『青き炎』の主人公・海津龍一と『DINO』の主人公・杉野(菱井)ディーノは、両者とも己の「野望」あるいは「復讐」のため、何人もの人を殺めているが、この2人の最大の違いは「良心の呵責」の有無だろう。

海津龍一の場合は、ひたすら金と己の欲望のために突き進む。
その努力の量も半端ではない。

しかし、ディーノの場合は父親の復讐という大きな理由がある。

2人の行動様式が同じようでありながらも、2人の行動の動機はまったく違うのだ。

その上、DINOの場合は愛情に飢えている面があるが、海津龍一の場合は、自分のほうから親を勘当して自ら家を出ていっている。

そしてラストも、海津龍一の場合は、破滅だが、ディーノの場合は(おそらくは)ささやかな幸せ。

テイストは似ているが、似て非なる作品なのだ。

そして、やっぱり両方面白い。

記:2017/09/05

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