アパートメント/デクスター・ゴードン
2022/10/28
おすすめテナーサックスのワンホーン・アルバム
これからジャズを聴こうとしている初心者に、テナー・サックスのアルバムを何枚か薦めるとしたら、ソニー・ロリンズの『サキソフォン・コロッサス』が筆頭に挙がることは、誰もが認めるところだろうが、私はデクスター・ゴードンの『ジ・アパートメント』も一緒に推薦したい。
こんなにゴキゲンな演奏ばかりのアルバムも珍しい。
デックスのブロウは快調だし、ケニー・ドリューのピアノも、ペデルセンのベースも、アルバート・ヒースのドラムも快調にノッている。
演奏が素晴らしい上に、初心者にも掴みやすいメロディ、そしてマニアも納得の演奏クオリティ。
1曲目のタイトル曲は、テーマの旋律がとってもゴキゲンだし、他にも、ホレス・シルバーの名曲《ストローリン》や、J.J.ジョンソンの《ウィー・ドット》、渋いスタンダードの《オールド・フォークス》などの名曲揃い。
最後の《Antabus(あんたブス?)》のアドリブの一部も、ユーモラスな瞬間があるし、こんなにオイシイ曲と演奏ばかりを堪能出来るアルバムも珍しいんじゃないだろうか。
しかし、このアルバムを名盤として扱っているガイドなんて見たことないし、それどころか、紹介しているガイドにすらお目にかかったことがない。
デクスター・ゴードンの最高傑作!とまでは言わないが、こんなにも楽しく、こんなにも素晴らしい演奏が収められたアルバムが見落とされていることは、かなり勿体無いことだと思う。
ちなみに、このアルバム、お客さんが家にいらした時によくかけるアルバムの一枚だ。これをかければ、部屋の雰囲気が一気にし、全員がなんだか嬉しい気分になれるからだ。
デックスの白黒写真を真ん中にボン!と置いただけのジャケットのデザインは、正直イマイチだが(ちなみにジャケットの写真とデザインは、スティープル・チェイス・レーベルの社長、ニールス・ウインターの奥さん)、それでも、心の底から嬉しそうに笑っているデックスの写真には惹かれるものがある。
まさにこのアルバムの内容そのものを表わしているようではないか。
記:2002/04/11
album data
THE APARTMENT (Steeple Chase)
- Dexter Gordon
1.The Apartment
2.Wee-Dot
3.Old Folks
4.Strollin'
5.Candelelight Lady
6.Stablemates
7.Antabus
Dexter Gordon (ts)
Kenny Drew (p)
Niels-Henning φrsted Pedersen (b)
Albert "Tootie" Heath (ds)
1974/09/08
追記
デクスター・ゴードンの『アパートメント』は、内容はとても素晴らしいのに、ジャケットで損をしているアルバムだと思うんですよね。
ジャケ写のゴードン、いい表情をしているんですが、おそらく初心者にとっては触手が伸びない、
というか、だったら、まだ名盤本などでよく見かける『ゴー』や『アワ・マン・イン・パリ』のほうが外れがなさそうと
直感的に感じちゃうんでしょうかね(ま、実際上記2枚も、ものすごく名盤ですが)。
ただ、上記2枚は、通好みな要素も封じ込められた意外と手ごわい内容なのに対して、
こちらの『アパートメント』のほうは、
徹頭徹尾聴きやすい、親しみやすい演奏のオンパレードなんですよね。
スリルもあるし、選曲のバランス、流れも良いと思う。
もっと多くのジャズ入門者に聴いて欲しいアルバムです。
ストレートに、テナーサックスという楽器の素晴らしさがなんの説明もいらずに、音だけで伝わってくるはずです。
記:2014/06/02
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