アトミック・ベイシー/カウント・ベイシー

   

スローナンバーも聴かせてくれる

俗称『アトミック・ベイシー』。

いわゆる、“ニュー・ベイシー”と呼ばれる時期の録音だ。

ニュー・ベイシーと呼ばれる時期は、52年から57年とされており、この時期がベイシー楽団の黄金期とされている。

まさにタイトルどおり、そしてジャケットどおりの迫力あるダイナミックなサウンドが… 、と書きかけて、やめた。

私は、今、3曲目のブルース《アフター・サパー》と、アルバム最後の《リル・ダーリン》に夢中だからだ。

両方ともスローテンポの曲。気だるくムード満点な演奏だ。

もちろん、カウント・ベイシー・オーケストラの魅力といえば、アップテンポのノリの良いリズムと、ホーン陣の繰り出すが「びゃー!」という迫力溢れる音塊、そして、演奏の合間からちょこっと顔を出す、少ない音数の小粋なベイシーのピアノだということに異論のある人はいないだろう。

むろん、本盤でも《レッド・バンクから来た男》のような、ノリノリのナンバーも存分に楽しめるが、アップテンポだけがベイシーじゃないと私に気が付かせてくれたのが本アルバムだ。

私はベースをかじっているので、なんとなく分かるのだが、アップテンポの曲よりも、スローテンポのバッキングのほうが数倍難しい。

リズムの間を活かすのが難しい。

音を出すタイミングを見計らうのに神経をすり減らすし、間を待つのがつらい。

さらには、スローになればなるほど、「ノリ」を持続させるのがとても難しい。

しかし、さすがに黄金のベイシーバンドのリズムセクションは、これだけのスローテンポでも、リズムにバネを持たせたまま、あたかも口笛を吹くかのように軽々と余裕で演奏をしている。

もちろん技術的な難しさ云々の問題は、聴き手には関係の無いことだから、いくら難しいことやっていても、聴いていてつまらなければ意味が無いのだが、ベイシーバンドの演奏はそのようなことは微塵も感じさせない。

技術的な難しさを聴き手には感じさせずに、そして、ノリのよさ、楽しさ、ムードを損なうことなく、サラリと凄いことをやっている。

ゆらーり、ゆらーりとスローで良いムードを漂わす《アフター・サパー》と、《リル・ダーリン》。

特に《アフター・サパー》のエディ・ロックジョウ・デイヴィスの“うわ・うあ・うわ~”と歌うテナー・ソロが最高。

大人のムードだ。

こういう、良い具合に力の抜けたナンバーも、ベイシー・オーケストラの魅力なのだなぁと、最近、ようやく、気が付きはじめた私。

記:2003/03/07

album data

BASIE (ATOMIC BASIE) (Roulette)
- Count Basie & His Orchestra

1.The Kid From Red Bank
2.Duet
3.After Supper
4.Flight Of The Food Birds
5.Double-O
6.Teddy The Toad
7.Whirly-Bird
8.Midnite Blue
9.Spolanky
10.Fantail
11.Lil' Darlin'

Count Basie & His Orchestra
Count Basie (p,cond)
Thad Jones,Joe Newman,Snooky Young,Wendell Culley (tp)
Henry Coker,Al Grey,Benny Powell (tb)
Marshall Royal (cl,as)
Frank Wess (as,fl)
Frank Foster,Eddie "Lockjaw" Davis (ts)
Charlie Fowlkes (bs)
Freddie Green (g)
Sonny Payne (ds)

#1,2,4,5,6,7,8,11
1957/10/21

#3,9,10
1957/10/22

 - ジャズ