マリオン・ブラウン・ライヴ・イン・ジャパン/マリオン・ブラウン

   

おだやか、枯淡の境地

マリオン・ブラウンといえば、「フリージャズの人」という印象が強かった。

なにせコルトレーンの『アセンション』や、アーチー・シェップの『ファイヤー・ミュージック』などといった“すげぇアルバム”への参加歴があるので、“あの時代”の、“あの濃い人たち”の“一味”だという認識がどうしても強く、コワモテなサックス奏者だと思いこむに充分だったからだ。

要するに、きちんと聴いてなかっただけの話なのだが……。

マリオン・ブラウンのメインの楽器はアルトだが、それ以外にもソプラノサックス、クラリネット、オーボエなどの管楽器も学び、さらには楽器以外にも音楽教育、政治学、経済学、歴史まで学生時代に学んだというのだから、フリージャズの、というか、正確には『アセンション』の 「ぶびゃぁ~」という音イメージと相まって、うわぁすげぇ人だなぁと、ちょっとだけ尻込みしてしまう私だった。

以上が音を聴く前の私の先入観。

しかし、実際の彼の音を聴いてみると、全然そうではないことに気が付く。
ワンホーン・カルテットのフォーマットで、彼のアルトをじっくりと聴いてみようと思いたち、買ってみたアルバム『マリオン・ブラウン・ライブ・イン・ジャパン』。

「おや?」 と思った。
意外と線の細い、メロディアスなサックスなのだ。

先述したようなコワモテなイメージは微塵もなく、むしろ、弱々しいぐらいだ。

東洋やアフリカに傾倒していたという彼。

一曲目のメロディとリズムは、外国人のイメージする典型的な“分かりやすい東洋”というか“なんとなく東洋っぽいサウンド”なテイスト。
まぁ聴きやすいといえば聴きやすいのだけど、リズムにもメロディにもメリハリがなく、おっとりした感じの演奏が終始続く内容。

澄み切った枯淡の境地とでも言うべきか。

このおだやかさ、マリオンには悪いが、とても心地よい眠気を誘うのだ。

個人的には3曲目のサックスソロが好きだ。

鋭さには欠けるものの、ちょっとしたリズムへのタイミングの乗り遅れや、アルトのかすれた音を聴くと、マリオン・ブラウンという人の持ち味は、素朴さ、純朴さにあるんじゃないかと思った。

どうやら、怖い人というのは誤解で、むしろ彼の周囲が怖い人たちだったのね。

フリージャズ、アセンション、コルトレーン、ファラオ・サンダースなどといった恐ろしい(笑)キーワードによる先入観に振り回されていた自分に反省。

1979年、青森は弘前市の市民会館でのライブ。

記:2003/03/06

album data

MARION BROWN LIVE IN JAPAN (Diw)
- Marion Brown

1.November Cotton Flower
2.La Placita
3.Angel Eyes~Hurry Sundown
4.Sunshine Road
5.Africa

Marion Brown (as)
Dave Burrell (p)
Gon Mizuhashi〔水橋 孝〕(b)
Wallen Smith (ds)

1979/11/08 弘前市民会館

 - ジャズ