知らぬ間に記憶に残るバリー・ハリスのピアノ/リー・モーガンの『ザ・サイドワインダー』
2021/02/19
ザ・サイドワインダー
リー・モーガンの《ザ・サイドワインダー》は、ジャズロックの「はしり」と世間的に認知されているが、それはあくまで「はしり」であって、この曲が4ビートに8ビートのニュアンスを取り入れた「最初の曲」というわけではない。
ハンコックのナンバー
この曲は、ビルボードチャートに最高25位までにランクインしたこともある、ジャズの中では数少ないヒットを放っている。
つまり、有名曲になった上に、この曲の後で、ブルーノートなどから大量にジャズロック路線の曲が発表されていることもあり、ジャズロックと呼ばれる音楽の「ごくごく初期」に吹き込まれた曲という事実は間違いではないので、ジャズロックの“走り”という表現は不適切ではないが、「最初の曲」というわけではない。
この曲は、ハービー・ハンコックの《ウォーター・メロンマン》に触発されて作ったいわれている。
スタジオでハンコックの曲を聴いたモーガンは、「ちくしょー、かっこいい曲書きやがって、俺もこういう曲を作りたいぜ」と意気込み、《ウォーター・メロンマン》に対抗するカタチでサイドワインダーを書いたとのがこの曲誕生の真相らしい。
もっとも、モーガン本人は、「帰りの地下鉄の中で思いついた」と、あたかも気軽に作曲したようなことをほのめかしているが、実際はハンコック曲へのライバル心はアリアリだったと思われる。
結果的にヒットしたのだから、「めでたし、めでたし」。
ブルースしているピアノ
最初に私がこの曲を聴いたときは、なんだか長くて退屈な曲だなぁ、これだったら後に出た《ザ・ランプローラー》のほうがコテコテで面白いじゃん、と思ったものだが、今は、この演奏のアッサリさ加減が結構好きだったりする。
ブレイク時に放たれるボブ・クランショーの重くてシンプルでカッコイイ3音。
これって、この曲のカナメだよ。
くわえて、バリー・ハリスのピアノも最初は印象に残らなかったが、今は、彼のピアノのアドリブを口ずさみながらキーをタイプしている。
つまり、記憶に残るキャッチーなフレーズをかなりちりばめながらバリー・ハリスはピアノを弾いているんだね。
最初はモーガンとジャズロックにバリー・ハリスはミス・マッチだと思ったが、なかなかやるじゃん、バリー・ハリス!(笑)。
見事にブルースしているよ。
記:2009/01/27
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