馬刺しを食べながら《ユー・ゴー・トゥ・マイ・ヘッド》
苦手な演奏、染みてきた
リー・コニッツやバド・パウエルが演奏した気品あふれる《ユー・ゴー・トゥ・マイ・ヘッド》が好きな私としては、ブルーノートの『クリフォード・ブラウン・メモリアル・アルバム』に収録されている《ユー・ゴー・トゥ・マイ・ヘッド》の演奏があまり好きではないんですよね。
全体的にベターッとしているように感じる。
イントロからして、メロメロムード音楽チック。
だから、長年『メモリアル・アルバム』の《ユー・ゴー・トゥ・マイ・ヘッド》は「飛ばし聴き」をしていたものです。
もう分かった!
お腹一杯じゃ~、って感じで、スイッチポン! 次の曲~って感じで。
で、先日、ある飲み屋のカウンターで、焼酎を飲みながらボーッと店の有線で流れているジャズを聴いていたんですね。
馬刺しが美味い店なんで、馬刺し旨ぇ~、焼酎効く~、なんて思いながら。
そしたら、聴こえてきたのが、例の《ユー・ゴー・トゥ・マイ・ヘッド》の甘甘イントロ。
うぉ~、ここでもかかったかぁ~!なんて思いつつ、しかし、ここは自宅ではないので飛ばし聴きが出来ないので「仕方なく」耳を澄ませていました。
すると?
うーん、ルー・ドナルドソン、こちらの記憶以上にアルトサックスに息を吹き込みまくって、熱く吹いているな~と思いました。
軽やかなルーさんのわりには、過剰といっても良いほどにベタに吹いています。
この曲想にそぐわない(?)、力を込めたベタな表現、最初は「ああ、なんでこんなに思いいれたっぷりなの?コニッツみたいにサラリとアルトを吹いたほうが良いのに」と思って聴いていたのですが、だんだんと「でも、こういうアプローチもいいかな?」と思えてきました。
そうすると不思議なもので、不器用なほどに汗をかきながら吹いているバラード表現に親しみを覚えるようになりました。
ルーさんのアルトに親しみを感じはじめた矢先、ソロオーダーはクリフォード・ブラウンにチェンジ。
おお、ブラウニーのトランペットも、ルーさんの熱さを受け継いでいるな~、なんて思いつつ、耳で追いかけていくと、さすがブラウン、ただブリリアントにラッパを鳴らしているだけではなく、非常にフレーズをうまく構成している。
流れにメリハリがあるんですよ。
さすがブラウニー、楽器の演奏技術に加えて、「聞かせる」フレーズのアイデアと、それを最大限に活かす「並べ方」にも長けているのだなと感じました。
より一層、目の前の馬刺しが旨く感じてきたことは言うまでもありません。
記:2015/12/10