ブルースニック/ジャッキー・マクリーン

      2022/01/11

全曲ブルース

ブルースニック(ブルースニク)。
ブルース族。

タイトルから推察されるとおり、全編ブルースナンバーのアルバムだ。

ジャズのアルバムにはブルースナンバーが収められているものが多いが、多いときでもアルバムの中にアクセント的にせいぜい1曲か2曲程度が普通だ。

しかし、このアルバムは大胆にも全曲がブルース。
なのに、全然退屈しない。

それはおそらく、マクリーンやハバードが、新しいブルースの響きを模索しているからなのかもしれない。

ベースラインはオーソドックスかつ典型的なツーファイヴ・ブルース。

マクリーンのアドリブも、これに則り、かつ、彼なりに拡張してゆこうという試みが感じられる。

ブルースのみのアルバム

たしかに、彼らのアドリブの大半が、ハードバップの枠からは逸脱していないフレーズなので、安心して(?)聴ける内容なのだが、ときおり耳にするフレーズの一部からは、後の新主流派に通じる予感のする、アウトしたフレーズを発見することが出来る。

特にハバードのトランペットからは、それが顕著だ。

もっとも、これは私の邪推なので、真相のほどは定かではないが、少なくとも、ブルースだけのアルバムを吹き込むにあたり、彼らは「ただのブルース集では終わらせない」という、並々ならぬ意欲を持って臨んだことは想像に難くない。

マクリーン作のブルースが2曲。
あとは、ハバードが1曲、ケニー・ドリュー作曲のブルースが3曲という構成となっている。

個人的には、いかにもマクリーン的な匂いがむんむんと漂い、後年も何度か演奏されているタイトル目が好きだが、ドリュー提供のブルースも、なかなか良い。

ケニー・ドリュー

そう、ドリューのピアノもなかなか良いし、興味深いものがあるのだ。

溌剌とした元気なバッキング、そして、シングルトーンとブロックコードを巧みに使い分けながら展開されるソロには、泥臭すぎない洗練されたブルース・フィーリングが漂っている。

単なる「ブルース超え」ではなく、フレーズの中に彼なりの迷いやユレがあるからなおさら興味深い。

コロコロと流暢にチック・コリアのようなフレーズを弾いたかと思うと、次の瞬間は、ベタな4ビート乗りなクリシェフレーズに逆戻り。
しかし気がつくと、当時のドリューらしからぬモダンなフレーズが現われては消える。

自分の中での、「手癖」と「手癖破り」の鬩ぎ合い。

鍵盤の上で様々な試行錯誤を繰り返すドリューのピアノの揺れ具合だけでも、追いかけてゆくと興味深いものがある。

フレディ・ハバード

このアルバムのもう一人の主役はフレディ・ハバードだ。

もしかしたら、リーダーのマクリーンを喰ってしまうんじゃないかと思うぐらいの縦横無尽の活躍っぷり。

ロリンズの《セント・トーマス》を一部引用したり、高音域を駆使して、ブライトな音色をフル活用したアドリブを繰り広げたりと、高らかで自信に漲ったプレイが続く。

もしかしたらこのアルバムはハバードの隠れた好演集と呼んでも良いぐらいだと思う。

オーソドックスなハード・バップの持ち味と、少しだけ新しい響きの混ざったエネルギッシュな演奏が集まったこのアルバム。

とても聴きやすい内容なので、マクリーンのアルバムの中でもかける頻度の高いアルバムだ。

記:2002/10/07

album data

BLUESNIK (Blue Note)
- Jackie McLean

1.Bluesnik
2.Goin' Way Blues
3.Goin' Way Blues (alternate take)
4.Drew's Blues
5.Cool Green
6.Blues Function
7.Torchin'
8.Torchin' (alternate take)

Jackie McLean (as)
Freddie Hubbard (tp)
Kenny Drew (p)
Doug Watkins (b)
Pete La Roca (ds)

1961/01/08

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Blue Note
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