バーズ・アイ・ヴュー/ドナルド・バード

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2人のトランペッター

「鳥瞰」の「Bird’s eye view」に引っ掛けたタイトルの『バーズ(Byrd’s)・アイ・ヴュー』は、ドナルド・バード、2枚目のリーダー作だ。

レーベルは、3年ほどでつぶれてしまった「幻のレーベル」、トランジション。

このアルバムのもっとも興味深いところは、トランペッターがリーダーであるにもかかわらず、もう一人トランペッターが参加しているところだ。

ジョー・ゴードンというトランペッターだ。
正直、ぱっと聞きの第一印象は、ジョー・ゴードンのトランペットのほうが瞬発力があり、プリリアントだ。
楽器操作が長けているため、もしかしたら、バードよりも訴求力が高いかもしれない。

なぜ、デビュー間もなく、知名度もそれほどなかったであろう新人トランペッターのリーダー作に、もう一人トランペッターを配したのだろう?

これでは、どちらのトランペッターのプレイが、リーダーのドナルド・バードのものなのか、リスナーには分かりづらいし、ドナルド・バードという新人トランペッターの個性を売り出しにくくはないか?

普通はそう考える。

しかし、もしかしたら、トランペッターが2人いたとしても、分かりやすい個性の違いから、どちらがリーダーのバードの演奏なのかくらい聴けばわかるよね?というプロデューサー、トム・ウィルソンからのメッセージなのかもしれない。

つまり、ジョー・ゴードンのトランペットの吹奏スタイルは、ディジー・ガレスピーを師匠を仰ぐだけのことはあり、濃厚にビ・バップの香りがただよっているからだ。
テクニック的にも、ビ・バップというハードな音楽の文法をしっかりマスターした上で、流麗かつテクニカル、そしてブリリアントな音色でアドリブを繰り広げている。

その一方でリーダーのドナルド・バードのほうはどうだろう?
もちろん、テクニック的なものはジョー・ゴードンの吹奏に肉薄してはいるが、明らかにタイプが違う。

ビバップ的なスピード感とスリルを犠牲にしてでも、印象に残るフレーズを考えながら吹いている印象。

つまり、その時その時のコードの流れにより、瞬間的な反射で華麗なビバップフレーズを繰り出すジョー・ゴードンよりも、時代的には「新しい感覚」、つまり、ビ・バップではなく、ハードバップ的なアプローチでトランペットを吹いている。

同じトランペッターといえども、明らかにアプローチのスタイルには新旧の差があり、新しいアプローチの新人をより強く印象付けるために、旧来のアプローチの名手を配することで、より一層ドナルド・バードの個性を浮き立たせようとした試みだったのではないかと考えるのは穿ち過ぎか?

ただ、単に偶然もう一人トランペッターがスタジオにいたから、なんとなく参加してみました的な流れだったりして。

その経緯は分からないが、このアルバムでは、明らかにジョー・ゴードンの存在が、より強くドナルド・バードの個性を浮き立たせてくれていることは確か。

そして、ハードバップの文脈からは、多少古いかもしれないビバップ的なアプローチが流れるジョー・ゴードンのトランペットも、ディジー・ガレスピーに肉薄するほどの素晴らしい演奏だ。

だから、1枚で2度おいしいアルバムともいえる。

いや、メロディアスなハンク・モブレイのプレイも光るし、彼はこのアルバムでは自作曲を2曲も演奏しているので(ちなみにリーダーのバードのオリジナル曲はない)、その張りきりようは並大抵のものではなかったはず。

さらに、まるで『カフェ・ボヘミアのジャズメッセンジャーズ』なリズム隊も悪かろうはずがないため、結局のところ、1枚で3度、4度おいしいアルバムだといえるだろう。

どこに焦点を充てて聴くかによっても、聴こえ方が変わってくるアルバムなのだ。

なかなかハードバップ好きのマニアックなツボを突いてくれる。

記:2019/12/14

album data

BYRD’S EYE VIEW (Transition)
– Donald Byrd

1.Doug’s Blues
2.El Sino
3.Everything Happens To Me
4.Hank’s Tune
5.Hank’s Other Tune
6.Crazy Rhythm

Donald Byrd (tp)
Joe Gordon (tp) #1,2,4
Hank Mobley (ts) #1,3-5
Horace Silver (p)
Doug Watkins (b)
Art Blakey (ds)

1955/12/02

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