良い意味で雑なのはライブならではの醍醐味~アット・ザ・カフェ・ボヘミア2/アート・ブレイキー
2017/05/22
ある日の晩、神保町のジャズ喫茶「BIG BOY」にこもっていた。
夜の営業時間、開店から閉店まで。
読書をしたり、原稿を書いたりしていたが、その中でも、パタッと手を休め、音に聴き入った唯一のアルバムがコレだった。
《ライク・サムワン・イン・ラヴ》が良い。
良い意味で、雑な演奏。
もちろん、アンサンブルとしてはまとまっているが、緊密になり過ぎない、音と音の間に適度な「遊び」がある。
とくに、ヨーロピアン・ピアノ・トリオや、ビル・エヴァンスが好きなマスターの店なだけあって、ビシッ!と密度の濃いアンサンブルのアルバムが流れることが多い。
もちろん、それらの演奏も悪くはないが、たてつづけに聴き続けると、多少疲れてくることも確か。
そんな中で、ふっとかかったこのアルバムが、店に違う空気が吹き込まれたように感じ、今日、私がいるときにかかった中ではもっとも古い年代のジャズだが、皮肉なことに、もっとも新鮮に感じた。
ケニー・ドーハムが歌う歌う。
モブレイのプレイも熱がこもっている。
シルヴァーのポキポキピアノも堂に入っている。
ブレイキーは、ドーハムのソロになった時に、リズムを倍テン(ポ)にしたにもかかわらず、いまひとつ空振りな感じ。
ドーハムのノリが今一歩、チェンジした瞬間から盛り上がってついてこないのだ。しまった、この局面で倍テンにする必要なかったかなぁ、とブレイキーの苦笑いも浮かんでしまうのも、ライブならではのハプニングと、楽しさ。
この、カフェ・ボヘミアのライブは、「vol.1」ばかりを学生時代はビール片手に繰り返し友達の家で深夜何度もリピートして聴き、気付けば、床にビールの缶が10本以上転がっていたこともある。
それほどまでに、アルバム全編にわたって聴き込んでいた「vol.1」だが、それに反して、「vol.2」のほうは、ほとんど聴いていなかった。
これを機会に、じっくりと聴きなおしてみようと思う。
記:2007/02/07