いま、再読したい『キャンディ・キャンディ』
2024/01/10
キャンディ・キャンディ
「キャンディ」が好きだ。
いや、リー・モーガンの《キャンディ》ではない。
もちろん、ジャズの定番曲の《キャンディ》も好きだが、ここで取り上げる「キャンディ」は、コミックの『キャンディ・キャンディ』だ。
その昔、小学生の女子向けのコミック誌『なかよし』に連載されていた名作で、テレビアニメ化もされ、一時期はかなりのブームになった作品だ。
しかし、原作者の水木杏子と、漫画家のいがらしゆみこの最高裁まで争われた「キャンディ・キャンディ著作権裁判」によって、現在はコミックは絶版になっており、再読したければ中古で入手するしかない。
原作者と漫画家の確執、裁判の経緯については、以下のサイトが詳しい。
>>CANDY CANDY BOOTLEGS!!
読めば読むほど、熾烈な争いだったということが分かる。
いや~、『宇宙戦艦ヤマト』もそうだったけれど、ヒットしたコンテンツの原作者と作画担当との著作権をめぐる争いは大変だ。
しかし、原作者と漫画家の間にどのような争いや確執があろうとも、『キャンディ・キャンディ』という名作の価値は損なわれることはないと私は信じている。
コミックとアニメの違い
私には2つ年下の妹がいた(今でもいるが)。
小学生の頃から、私は特撮やアニメが大好きで、半ズボンでヒザには常にバンドエイドという典型的な小学生男子だったにもかかわらず、妹から『キャンディ・キャンディ』のコミックを借りて読んでいたし、テレビアニメも毎週、いや隔週金曜日の夜7時から観ていた。
なぜ「隔週」だったのかというと、同時間帯には『宇宙鉄人キョーダイン』、あるいは後番組の『大鉄人17(ワンセブン)』が放映されていたからだ(いずれも、原作者は石ノ森章太郎)。
典型的な小学生男子だった私からしてみれば、もちろん「キャンディ」も捨てがたいが、やはりヒーローやロボットが「ドカーン!バキーン!」のほうが良かったのだ。
だから、『キャンディ』と石ノ森章太郎・原作の特撮は隔週で見ることになっていた。
もっとも、コミックを読んでいると、アニメは冗長な描写やエピソードが多く、それは『ドラゴンボール』のコミックを読んだ後にアニメ版を観ているようなもどかしさに近いものがあったので、やはり私にとっての『キャンディ・キャンディ』は、コミックが一番なのである。
アニメの場合は、小学生の女の子をターゲットにしたキャラクター商品が劇中に登場したりしていたからね。
たとえば「しあわせのクルス」のような「コミックには出ていたっけ?」的なアイテムだ。
あと、アライグマのクリンもキャラクター商品化されているためか、キャンディと行動をともにするクリンの描写の比重もアニメでは大きかったような気がする。
だから私は、やっぱり『キャンディ・キャンディ』を鑑賞するなら、「アニメよりコミックでしょ!」という思いが強い。
もちろん、アニメのテーマソング、
「♪そばかすなんて、気にしないわ」の《キャンディ・キャンディ》や、
エンディングテーマの
「♪きらきら光る風の向こうで、あの人が私を呼んでいる~」の《あしたがすき》は、名曲だとは思っているけれど。
スケール大きな作品
高校生が『キャンディ・キャンディ』を読めば、「世界史」の受験勉強がもっと楽しくなる!とまでは言わないし、試験で良い点数が取れる!とも言わないが、20世紀初期のアメリカやイギリスを明確にカラーイメージすることは出来るだろう。
舞台となるアメリカのミシガン湖周辺のエリア、イギリスはロンドン、再び、アメリカのシカゴ、そしてニューヨーク。
そして、第一次世界大戦。
これらを舞台に、どこまでも明るく元気に時代を駆け抜ける少女・キャンディス・ホワイト(・アードレー)。
なかなかスケールの大きな作品なのだ。
キャンディは看護婦(看護師)になるのだけれども、当時、クラスメートの女子たちは、いっせいに「将来は看護婦(看護師)になる!」って言ったな、そういえば。
『アタック・ナンバーワン』が再放送されていたときは、バレーボールの選手になりたい!って言ってたくせに(笑)。
それだけ、当時の小学生の女の子たちには大きな影響を与えていた作品だったのだ。
ステアが好きだった
「キャンディ」に登場する人物は、ニールとイライザや、エルロイ大おばさま、そしてアンソニーなど、個性的なキャラクターが多い。
その中でも、特に私はステアが大好きだった。
彼は、志願兵としてパイロットとなり、敵軍のエースパイロットと一騎討ち。しかし、相手の飛行機の調子が悪かったため、「今度、戦場で合間見えたら戦おう」と見逃したところ、別の敵機に撃たれて戦死してしまうという、あまりにカッコ良すぎな最期ではあったが、本来のステアはいつもヘンな発明をしているお調子者でヒョウキンで素敵なヤツだった。
ステアはメガネをかけていたけれども、ステアの恋人のパティもメガネをかけていた。
戦場に赴いたステアの印象的なセリフが「この機はパティっていうんだ。パティにはめがねがないとな」。
今考えれば、ステアは「メガネ男子」、パティは「メガネ女子」の走りだったのかもしれない。
このカップル、幸せになって欲しかったのに、本当に、本当に、めちゃめちゃ残念だ。
フラニー・ハミルトン
メガネといえば、私はフラニーも好きだった。
優秀かつ勤勉実直な看護生で、キャンディとは反りが合わないマジメ女子。
従軍看護婦を志願するなど、本当に看護に命をかける真面目な人物だった。
パティやフラニーが好きだった私は、すでに小学生の頃から「メガネ萌え」な野郎だったのか?!
テリィとスザナ
妹は、テリィが好きでしたね。
本名はテリュース・G・グランチェスター。
妹は、どういうわけか字を読み違えていたのか、間違いに気が付くまでは、しばらくテリィのことを「ティリー」と呼んでいた。
いわゆるイケメン、そして「オレ様キャラ」なんだけれども、彼とブロードウェー女優のスザナのエピソードが泣ける。
スザナは、稽古中に落下してくる照明からテリィをかばって下敷きになり、大怪我、片足切断という事態になってしまう。そして、テリィが選んだのは、キャンディではなく、スザナ。
「おお、テリィ、男じゃん!」と当時は思ったものだが、どうやら妹を含め、女子一派はスザナのこと嫌いな人が多いですね。
ズルい!
(テリィを)取った!
……みたいな感じで。
でもね~、人気女優が自分を庇って片足切断するほどの大怪我をし、女優生命を絶たれたんだからね~、男だったら「責任」取らなアカンと思うのが普通でしょ?
まだ心の底からスザナのことを愛していなくても、スザナのことを介護をしているうちに、つまり一緒に過ごす時間の堆積から育まれる愛だってあるわけじゃないですか。
でも、「スザナずるい」派の女子たちには、そういう理屈ってあまり通用しないみたいだね。
アルバートさん
あと、アルバートさんも、私好きでしたね。
もちろん、アルバート・アイラーのことではない。
世界を旅する謎の放浪男、かつ、記憶喪失男。
そして、その正体は………………?
記憶喪失になってからはキャンディと暮らしたりもしていたが、その正体は、エルロイ家のアードレー一族の総長である「ウィリアム大おじさま(ウィリアム・アルバート・アードレー)」。
そして、キャンディが幼い頃に出会い思い焦がれていた「丘の上の王子様」。
当時は多くの女子が胸をキュンとさせたに違いない「おチビちゃん、きみは泣いている顔より笑った顔のほうがかわいいよ」というセリフ。
クサいセリフながら、必殺フレーズには違いないので、私も大人になったら真似して何人かの女の子に言ってみたことがあったけど、だいたい引かれましたね……(「おチビちゃん」がマズかったか?!)
そういえば、妹は、どういうわけか字を読み違えていたのか、アルバートさんのことを「アルバイトさん」と呼んでいましたね。
ヘタな韓流よりもドラマチックじゃん?!
つたない記憶を頼りに、ツラツラと「キャンディ」について書いてみたが、なんだか書きながら、ステアが戦死するところや、9巻のラストシーンが頭をよぎりだし、なんだか猛烈に感動しはしめてきているぞっ!
「キャンディ」のストーリー、そしてキャンディを取り巻くイケメンたちのセリフなんかは、ヘタな韓流よりも、よっぽど感動的だぞ!
ペ・ヨンジュン(古い?)が、どんなに頑張ってバグパイプを持ってスコットランドの衣装を着ても、「丘の上のヨン様」にはなれないぞっ!(笑)
恋愛あり、イジメあり、イジメられた主人公を見守るイケメン複数人あり、大自然あり、貴族的生活あり、ライバルあり、留学あり、医療あり、戦争あり、きちんと最初に撒いた伏線を回収してくれるストーリーありと、とにかくスケール大きく、読みやすく、面白く、感動させてくれる素晴らしい作品だったのだ。
あ、韓流にハマる(ハマった)女性たちって、「キャンディ」をリアルタイムで読んだり見たりしている世代かもしれない。
もしかして、「キャンディ」的な感動と胸キュンな感覚を味わいたいんだけれど、日本にはそのような作品や、ベタなセリフが似合う役者もいないから韓国にその要素を求めている(いた)のかも?
もっとも、リアルタイムで「キャンディ」を読んでいた40代、50代の世代の女性のみならず、平成生まれの現代っ子たちも「キャンディ」を読めば、きっと感動するんじゃないかな?
ディズニーや「プリキュア」もいいけど、「キャンディ」もいいよ!って、小学生の姪っ子にコミックをプレゼントしようかな。
同様に『キャンディ・キャンディ』を幼い頃に見て(読んで)育ったお母さんたちも、娘さんのために買って読ませてあげましょう。
とはいえ、残念ながら、現在は中古でしか出回っていないんだけど。
原作者と漫画家、和解しないのかな……。
記:2017/12/22