チェット・ベイカー・カルテット/チェット・ベイカー
シャープなチェット
サクッ! パリッ!
なんだかスナック菓子の宣伝のようだが、このアルバムのイメージを音で表現すると、おそらくは、こんな感じだ。
チェット・ベイカーの甘くとろ~りとしたヴォーカルとは対照的に、この頃のチェット・ベイカーのトランペットは、溌剌とした歯切れの良いプレイを聴かせてくれる。
ビールの宣伝ではないが、シャープなキレがある。
同じく、そのことは、ピアノのラス・フリーマンにも当てはまり、このアルバムではフリーマンも大活躍。
アイスの宣伝ではないが、シャキッ!と粒立ちのハッキリしたピアノだ。
そして、簡潔でツボを押さえたプレイが、なんとも心地よい。
チェット・ベイカーのトランペットはもちろんだが、私はむしろ、ラス・フリーマンの明快で歯切れの良いピアノを聴くために本盤を聴いているぐらいなのだから。
《ファン・タン》における、チェットのトランペットが入る前の演奏といい、《アン・アフタヌーン》のテーマ直後のピアノソロといい、このアルバムで聴けるフリーマンのピアノは快調で、聴き所も多い。
彼のオリジナル曲が中心に演奏されているので、ラス=チェット双頭リーダー的な位置づけのアルバムなのかもしれない。
ジャケット裏には、参加ジャズマンのスナップ写真が一枚ずつレイアウトされているが、ベースのリロイ・ヴィネガーの写真がとても頼もしく見える。
リズムは俺にまかせろ、といった雰囲気が静かに漂ってくるような、落ち着いた笑顔、そして太い腕。頼りがいのあるベーシストといった風格を漂わせている。
全体を通して、簡潔でツボを押さえた演奏が続く本アルバムは、気分をリフレッシュしたいときや、甘くないチェットを聴きたいときなどには最適だと思う。
記:2002/05/14
album data
CHET BAKER QUARTET (Pacific Jazz)
- Chet Baker
1.Love Nest
2.Fan Tan
3.Summer Sketch
4.An Afternoon At Home
5.Ghosts :first version
6.Say When
7.Lush Life
8.Amblin'
9.Hugo Hurwhey
Chet Baker (tp)
Russ Freeman (p)
Leroy Vinnegar (b)
Shelly Manne (ds)
1956/11/06