ザ・サウンド・オブ・ザ・ワイド・オープン・スペーシズ/ジェームス・クレイ&デヴィッド・ニューマン

   

雄々しいテナーの共演

テナーサックス奏者同士の“競演”でもあり、“共演”ともいえる。

同じ楽器同士、もちろん互いの存在やプレイを意識せぬはずはないのだろうが、それでも、相手を出し抜こうなどという考えは微塵も音となって現れてはいない。

もちろん、ジェームス・クレイに、デヴィッド・ニューマンという、タフでワイルドなテキサステナー者同士ゆえ、アドリブ合戦では火花を散らす。

しかし、彼らの頭の中に常にあるものは、勝ち負けよりもまずは、アンサンブル。

『ザ・サウンド・オブ・ワイド・オープン・スペーシズ』は、「テナーバトルもの」ではあるが、決してエゲつない罵り合いではない。

見事な調和を見せる2つのテナーサックス。

エッジが際立ちつつも、どかか暖かさをもたたえたサウンド。

少人数編成なのに、ビッグバンドを聴いているかのような楽しさと、アンサンブルのまとまり具合を楽しむことが出来る。

ジャズにおけるコンボ編成とは、要するに、ビッグバンドの小所帯化なわけだが、このような当たり前の事実を我々は時として忘れがちだ。

むしろ、コンボを拡大したものをビッグバンドだと思う傾向があり、この認識は実は本末転倒なのだが、コンボ形式のジャズばかり聴いていると、だんだんとそのような認識になってきがちだと思う。

私は、このなんでもない、二人のテナー奏者のタフで微笑ましい交歓を聴くたびに、ビッグバンドを聴いているときと同種の楽しさを感じる。

もちろん、サウンドの色彩、音の数などはビッグバンドの迫力とは違うのは当然だが、全体の中での自分の立ち居地、他の楽器との距離感を測定した上で、最大限の自己表現を行うジェームス・クレイとニュートンのサックスには、ビッグバンドの楽団員ならではの職人気質を感じてしまう。

また、アルバム全体の雰囲気がテキサス、テキサスした、ある種の“泥臭さ”が薄まり、むしろ典型的なハードバップ的な色彩が強いのは、キャノンボール・アダレイがプロデュースしていることと関係があるのかもしれない。

また、彼らが思う存分個人芸を披露できるよう、邪魔をしないくせにキチンと煽りまくっているウイントン・ケリーの功績も大きい。

適度に洗練されつつも、ドッシリとした安定感と風格。

この兼ね合い、バランスが良い。

大音量でドップリとひたりたい、これぞオトコのジャズの世界。

記:2010/01/21

album data

THE SOUND OF THE WIDE OPEN SPACES (Riverside)
- James Clay & David "Fathead" Newman

1.Wide Open Spaces
2.They Can't Take That Away From Me
3.Some Kinda Mean
4.What's New
5.Figger-Ration

James Clay (ts,fl)
David Newman (ts)
Wynton Kelly (p)
Sam Jones (b)
Art Taylor (ds)

1960/04/26

動画でも解説しています。

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