クレッセント/ジョン・コルトレーン
これぞコルトレーン流「バラード」の真骨頂
重く、ゆったり、力強いコルトレーン。
じんわりと染みてくる音と、それに伴いむくむくと湧きおこる感動が、リスナーに襲いかかってくる。
この時期の彼の諸作と比較すると、インパクトは少ないかもしれないが、荘厳ですらあるこの世界には、同時期の人気アルバム『バラード』とは違った深みと精神性が宿っている。
このアルバムを隠れ愛聴盤とするコルトレーンマニアが多いのも頷ける。
つまりは、コルトレーンのバラード表現における本質的な部分や、当時彼が擁していたマッコイ・タイナー、ジミー・ギャリソン、エルヴィン・ジョーンズという代替不能かつ唯一無二のコルトレーン・サウンドを築き上げるメンバーたちの実力と本領を理解すればするほど、この『クレセント』におけるスローテンポの演奏こそが、彼らの資質、力量、表現力を十全な形で発揮できた最良の演奏だということが分かるからだ。
リラクゼーション効果を求めての『バラード』や『ウィズ・ジョニー・ハートマン』も悪くない。
しかし、より一層深いバラード表現を求めるのであれば、断然『クレッセント』なのだ。
この重厚な感じ。
最初に一回や二回聴いた程度では、なかなか“染みて”こないかもしれないが、じわじわと後になってから効いてくる、まるで日本酒のようなアルバムなのです。
記:2010/07/07
album data
CRESCENT (Impulse)
- John Coltrane
1.Crescent
2.Wise One
3.Bessie's Blues
4.Lonnies Lament
5.The Drum Thing
John Coltrane (ts)
McCoy Tyner (p)
Jimmy Garrison (b)
Elvin Jones (ds)
1963/03/07