ザ・カッティング・エッジ/ソニー・ロリンズ
2022/04/29
陽気な混沌 ゴリ押しパワー
「ゴリ押しワンコード」のタイトル曲で始まるライヴ盤だ。
時は1974年の7月。
場所は、スイスのモントルー。
そう、あの有名なジャズフェスティヴァルでの演奏ですね。
ソニー・ロリンズとロリンズ率いるバンドメンバーは、1曲目から気合いの「一発モノ」でグイグイ押してきますな。
いいぞ!
くるね~。
ボブ・クランショウが太いエレベで、ブイッ!と弾いてくれているる。
これはなかなか気持ち良し。
ヘッドハンターズのポール・ジャクソンにも十分張れるだけのぶっ太さを持っている。
こういうワンコードのベースって、けっこう難しいんだよね、特に4ビートばかりやってきた者としては。
グルーヴを保ち、かつ演奏を鼓舞するちょっとしたアイデアを盛り込む。
これってなかなか「センス」の世界なんですよ。
アコースティックベースでは腰の効いた低音で演奏に躍動感をもたらしていたボブ・クランショウ。
この「腰にきます」っぷりは、エレクトリックベースに持ち替えても変わらないパンチの強さだ。
このジャケットは、長年、買おうか買うまいか中古CDショップ店頭で私の頭を悩ませるに十分だった。
だって、ロリンズさん、振り向きざまにサングラスのフレームがキラリ!だよ。
うーん、すごく素晴らしいタイミング。
しかし、なんだか胡散臭い(笑)。
この「なんだか胡散臭い」という気持ちに拍車をかけるのが、パーソネルだ。
バグパイプ?
1曲だけだが、見慣れぬ楽器の名前が印刷されている。
『キャンディ・キャンディ』で「丘の上の王子様」が吹いていたアレですか?!
たしか、スコットランドの民族衣装を身にまとい、ブワーブワーと持続音を吹いていたような記憶が。
これって、ジャズに合うのか?
いや、合う合わないは、リーダーのロリンズ自信の判断でOKだったのだろう、私ごときが意見をする筋合いはない。
しかし、妙にそそらない(笑)。
だから長年買わなかった。
しかし、ある時、意を決して買った。
うむ、やはりなんだか怪しい。
特に冒頭。
しかし、少々眺めのバグパイプとテナーサックスのイントロがひと段落し、リズムがふわっと入った瞬間、なんだか楽し気なムードが漂い始める。
なるほど、曲順が最後になっているということは、おそらくジャズフェスのラストに演奏されたナンバーなのだろう。
ラストを飾るにはふさわしい大団円感を盛り上げるに十分な演奏といえる。
それにしても、バグパイプの音色って、なんとまあ存在感のあることよ。
完全にロリンズのテナーサックスを食いかねないほどのインパクトだ。
途中のクランショウのベースソロもグー。
ロリンズのアルバムの中ではもっとも聴く頻度の低いアルバムではあるが(笑)、時おり、妙ちくりんで陽気な混沌っぷりが恋しくなることも確かだ。
『カッティング・エッジ』。
なかなか侮れないアルバムでやんす。
暑苦しかったり怪しかったりするのがイヤだよという方は、2曲目の《トゥ・ア・ワイルド・ローズ》に避難しましょう。
記:2012/05/09
album data
THE CUTTING EDGE (Milestone)
- Sonny Rollins
1.The Cutting Edge
2.To A Wild Rose
3.First Moves
4.A House Is Not a Home
5.Swing Low, Sweet Chariot
Sonny Rollins (ts)
Stanley Cowell (p)
増尾好秋 (g)
Bob Cranshaw (el-b)
David Lee (ds)
Mtume (congas)
Rufus Harley (bagpipes) #5
1974/07/06
Montreux Jazz Festival, Switzerland