12月はレッド・ガーランドの『オール・カインズ・オブ・ウェザー』の季節

   

All Kinds of WeatherAll Kinds of Weather

先日、東京に雪が降った。

12月の降雪は、11年ぶりとのこと。

ニュースでは、大雪と言っていたが、都心部の積雪はわずか1センチ。これで“大雪”などと言われちゃ、雪国に住む人にとっては「なにをその程度で」なことなのかもしれないが、人も交通網も雪に慣れていない東京では、電車が止まったり遅れたり、人が転んだり、雪を理由に仕事をキャンセルする人がいたり、交わす会話は誰も彼もが雪のことばかりと、ちょっとした降雪ながらも、“雪”という天候が、日常生活の意識には無い我々にとっては、ちょっと違った雰囲気の“非日常”な一日だった。

夕方の気温は零度だったそうで、私はその時渋谷の街を歩いていたが、どうりで肌が冷たいなと思った。

それだけに、店の中に入った瞬間の暖かい空気がとても有難く感じる。

また、家に帰ったときも同様で、外の空気が冷たければ冷たいほど、電気のついた家の中に入った瞬間の空気が暖かく、とても有難く感じる。

テーブルの上で鍋がグツグツ煮え立っていると、さらに最高なのだが……。

冬は寒ければ寒いほど、暖かさが有難く感じられるし、そんな時ほど暖房の効いた暖かい部屋で、ゆったりとした気分で聴く音楽がとても心地良く感じられるものだ。

うちの家族はキリスト教徒はないので、クリスマスを特に特別な日だとは考えてはいないが、それでもキリスト教徒ではない多くの日本人がクリスマスを楽しみにする気持ちは、分かるような気がする。

やっぱり寒い季節の中、身も心も温かくなるイベント(あるいは口実)が欲しいのだと思う。

かく言う私自身も、イブに抜くシャンパンの銘柄を今年はどうしようかなと楽しみにしているわけで、これはクリスマスがどうというよりも、シャンパンの似合うシチュエーションが楽しみだからなのだと思う。

言うまでもなくシャンパンの似合うシチュエーションとは、暖かい部屋と、うまい料理なわけで、要するに食い気が楽しみの根っこになっているのですな。色気が原動力になる方々も多いようですが(笑)。

昨日聴いたアルバムは、レッド・ガーランドの『オール・カインズ・オブ・ウェザー』。

タイトル通りの選曲で、「天気(と季節)」に関する曲を集めたアルバムだ。

ずんずんと前へ前へと突き進むチェンバースの太いベースに、しなやかなアート・テイラーの軽妙なブラッシュ・ワーク。

抜群のサポートを得て、軽快にスイングるするガーランドのピアノは相変わらず気持ち良い。

ブロックコードでテーマのメロディを奏でる一曲目の《レイン》が個人的には好きだが、昨日に限っては、《ウインター・ワンダーランド》に聞き惚れていた。

というよりも、きちんと聴いたのは今回が始めてだったのかもしれない。

演奏は良いんだけど、このアルバム、演奏の展開がワンパターンなので、後半になればなるほど、だんだん飽きてきてしまうのだ。

だから、ラストから2曲目の《ウインター・ワンダーランド》になる頃は、演奏に集中していなかったのだ、今までは。

あ~、なんか聴いたことがある旋律だなぁ、としか思っていなかった。

しかし、先日は、季節柄ピッタリな曲ということで、ベタな選曲だけど、いい感じで聴いていた。

ラストに《ジングル・ベル》の最初のワン・フレーズを添えるところなんて、ニクイですね。

レッド・ガーランドのシングル・トーンとブロックコードの美しさは、何もこのアルバムに限ったことではないが、やはり聴くとウキウキした嬉しい気分になってくる。

特に、この季節は、パーティのBGMなんかにも良いかもしれないですね。

album data

ALL KINDS OF WEATHER (Prestige)
- Red Garland

1.Rain
2.Summertime
3.Stormy Weather
4.Spring Will Be A Little Late This Year
5.Winter Wonderland
6.'Tis Autumn

Red Garland (p)
Paul Chambers (b)
Art Taylor (ds)

1958/11/27

記:2002/12/10

 - ジャズ