ドミノ/ローランド・カーク
2021/02/24
カーク入門の定番
ローランド・カーク入門に最適な一枚だろう。
また、彼を代表するアルバムの筆頭であり、かつ定番ともいえる。
サングラスをかけて、首からおびただしい数の楽器をぶらさげている、いわゆる「怪人」的なカークの写真から「この人怖い」なんて拒否反応を起こす人は、そんなにいないとは思うが、もしそのような方がいたとしたら、まずは『ドミノ』のタイトルナンバーや、《ゲット・アウト・オブ・ア・タウン》を聴けば良いと思う。
きわめてまっとう、かつ聴きやすいオーソドックスなジャズを演奏していることが分かるはずだ。
まずは《ドミノ》から
個人的には、カークの最高傑作は『ヴォランティアード・スレイヴリー』だと思っている。
しかし、このアルバムは圧倒的な快楽ミュージックでありながらも、演奏のテイストはR&Bをはじめとするブラックミュージック・テイストの比重が高いため、「オーソドックスな4ビートジャズ」を期待している人にとっては、少し肩透かしをくらうかもしれない。
(もっとも、いずれカークの魅力に目覚めた人は是非手にして欲しいアルバムではあるが)
であれば最初に聴くカークは、哀愁の旋律と、カークが吹くフルートの音色が絶妙にマッチしている《ドミノ》から入ると良いと思う。
もちろん、聴きやすい旋律と優れた演奏ゆえ、万人に安心してオススメできる演奏ではあるが、最後の感極まった雄叫びなどは、常にバイタリティに満ち溢れたカークの片鱗を捉えることが出来、このあまりに肉感的かつ人間的な魅力を受けてがどう捉えるかが、カークを好きになるかどうかのポイントとなるだろう。
ケリーの功績
個人的には、このアルバムが好きな大きな理由として、ピアノにウイントン・ケリーが参加していることが大きい。
ケリーの軽やかでリズミックなピアノは、いつ聴いても本当にすばらしい。
そして、カークの変幻自在な表現にケリーのピアノの相性は抜群なのだ。
すべての曲にケリーが参加しているわけではないが、《ゲット・アウト・オブ・ア・タウン》のピアノを聴けば、オーソドックスな4ビートジャズのテイストでありながらも、演奏に華やかさと広がりをもたらすケリーのピアノに耳を傾ければ、ありふれた曲のありふれた演奏でありながらも、いやだからこそ、ケリーのピアノの真価が分かるはずだ。
もちろん、前半のアンドリュー・ヒルのどんよりと重たいピアノも、肉汁したたるカークのプレイと絶妙なマッチングをみせているのだが、ある意味、一見ミスマッチとも思われるケリーとカークの鮮やかな対比がもたらす演奏のメリハリも心地よい刺激をもたらしてくれる。
ドミノ・ダンス
関係ないけど、「ドミノ」といえば、YMO世代にとっては松武秀樹のファーストソロアルバム『ロジック』に収録されている《ドミノ・ダンス》を思い浮かべる。
クールかつ微ユーモラスな《ドミノ・ダンス》に、哀感たっぷりのカークが演奏する《ドミノ》。
双方の「ドミノ」には、まったく共通項はないのだが、それぞれのミュージシャンにとって「ドミノ」とは、いったいどのような思い入れが?
album data
DOMINO (Mercury)
- Roland Kirk
1.Domino
2.Meeting on Termini's Corner
3.Time
4.Lament
5.A Stritch in Time
6.3-in-1 Without the Oil
7.Get Out of Town
8.Rolando
9.I Believe in You
10.E.D.
Roland Kirk (fl, ts, vocals, stritch, manzello, nose flute, siren)
Andrew Hill (p,celeste) #1-6
Wynton Kelly (p)#7-10
Vernon Martin (b)
Henry Duncan (ds)#1-6
Roy Haynes (ds) #7-10
1962/04/18,09/06
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