フリー・ジャズ/オーネット・コールマン
不思議な知的興奮
ジャクソン・ポロックの絵をジャケットにした製作者のセンスを買う。
ポロックの絵は、2次元に絵の具をたたきつける画法だが、このオーネットとドルフィーによるダブルカルテットの演奏は、さながら、3次元の空間に音をたたきつけているかのようだ。
左右両チャンネルに異なるカルテットの演奏が配され、オーネット・コールマン率いるカルテットと、エリック・ドルフィー率いるカルテットのサウンドが、あるときは融合、あるときは拡散を繰り返す。
相互の音と音の間には、整合性はなく(ときにあるが)、むしろ音が蠢く“今”を生々しく捉え、かつ共振しようという目論みが感じられる。
手法は前衛的かもしれないが、ときおり垣間見せるオーネットの煌きのカケラ、ドルフィーの粘着質な美には、ため息。…をつく間もなく音空間は気まぐれに、別の位相へと転換してゆくのだ。
オーネットの“失敗作”と見る向きもあるが、オーネット自身は、このレコーディングで確かな感触を掴んだのではないか?
というのも、後年のプライム・タイムの編成を見れば分かるとおり、彼は同じ楽器を二つずつ配する試みを続けているからだ。
ダブル楽器編成が生み出す、オーネット流のクネクネした躍動感の妙は、音楽的に同じイメージを共有した、同一楽器のプレイヤー同士による、異なるプレイと、その振幅が醸し出しす予測不能なスリリングな音空間にある。
一筋縄ではいかない、音の洪水。
不思議な知的興奮。
これって、けっこう心地よいんじゃないの?
しかし、世間で喧伝されているほど騒がしくもないし、難解な音楽でもない。
記:2006/05/22
album data
FREE JAZZ (Atlantic)
- Ornette Coleman
1.Free Jazz
2.First Take
Ornette Coleman (as)
Don Cherry (tp)
Scott LaFaro (b)
Billy Higgins (ds)
Eric Dolphy (bcl)
Freddie Hubbard (tp)
Charlie Haden (b)
Ed Blackwell (ds)
1960/12/21