ズッシリ!低くて重たいチャーリー・ヘイデンのベース
2018/01/14
先日、四ツ谷のジャズ喫茶「いーぐる」で、ベースの「4ビート特集」の講演をさせていただいた。
テーマを決めてレコードやCDをかけ、それについて言葉で解説するという、この店名物の「特集」だ。
私はタイトルどおり4ビートの名手たちの名演をかけて、それについて解説をした。
リロイ・ヴィネガー、レイ・ブラウン、ポール・チェンバース……。
おなじみの、ベースの巨人たちの演奏を、店に集まった40人弱の方々たちに解説をした。
上記以外、まだまだ様々なベーシストの演奏をかけたが、その中にはもちろんチャーリー・ヘイデンも含めた。
『モントリオール・テープス』から《ラウンド・ミッドナイト》をかけて、彼の“低音の存在感”について解説した。主役のサックスがエグいだけに、サックスのほうに耳がいきがちだと思うが、よく聴くと、いや、よく聴かなくても気付かぬ間にヘイデンのベースの音もテナーサックスと同等に耳に張り付いているはずですよ、と。
それだけ、ヘイデンのベースの存在感ってスゴいものがあるんですよ、と前振りをして《ラウンド・ミッドナイト》を流した。
この特集を終え、全体を振り返ったときに気がついた。
「ヘイデンが一番異色なベーシストだった」ということ。
一聴、特別変わったことをやっているわけではない。少ない音数で、堅実にジョー・ヘンを支えている……、と思いきや、たしかに支えてはいるのだが、支えると同時にすごい「主張」していることにも気がついた。
べつに、ヘンなカウンターメロディをいれて、ジョーヘンのサックスを邪魔しているわけではない。
少なくとも、音符的にはフロントのサックスを邪魔しているわけではない。
それなのに、妙な存在感がある。
伴奏をしていることには違いないのだが、伴奏を超えた働きかけも同時に演奏全体におよぼしているのだ。
また音色自体も、ほかのベーシストの音域よりも1オクターブ下に聴こえてしまうほど、ズッシリと重たいトーン。
もちろん実際は、通常のウッドベースよりもさらに1オクターブ低い音で弾いているというようなことはないのだが。
演奏といい、音域といい、不思議な存在感を放つヘイデンのベース。
この謎は解けそうで解けない謎として、今後の鑑賞の楽しみの一つとなりそうだ。
記:2005/05/29(from「ベース馬鹿見参!」)
album data
THE MONTREAL TAPES-CHARLIE HADEN,JOE HENDERSON,AL FOSTER TRIBUTE TO JOE HENDERSON (Verve)
- Charlie Haden
1.Round Midnight
2.All The Things You Are
3.In The Moment
4.Passport
Charlie Haden (b)
Joe Henderson (ts)
Al Foster (ds)
1989/06/30
Festival International de Jazz de Montleal,Quebec,Canada