「昼顔」オープニングテーマ 「あの」旋律は、マイルスも吹いていた
昼顔のメロディ
長らく、喉の奥に刺さっていた小骨が取れたような感じです。
やっとわかった。
どこかで聴いたことがあると思っていたんですよね。
ドラマ『昼顔』のオープニング曲の《Never Again》の「あの」部分。
なんて歌ってるのか、歌詞の内容は分からないのですが、とりあえず、私には、
♪山辺さ~ん!
に聴こえる(笑)。
「さーん」よりは、「せーん」に聴こえ、きっと「山辺先生」とか「山辺仙一」という人がいて、その人のことを省略して呼んだときのメロディかな?なんてバカなことばかりを考えていたものです。
その「山辺さん」の部分のメロディが、昨年から、『昼顔』が放送されるたびに、あるいは『SMAP×SMAP』で、キムタクがLiLiCoに壁ドンやヒザドンして迫るたびに、「うーん、この印象的な旋律はなんだっけな? クラシックであったような気がするんだけど……」と思っていたんですね。
そしたら、クラシックじゃなくて、マイルスだった(・∀・)b
クラシックと感じたのは、きっとベートーベンの《運命》に近いものを感じていたのかもね。
♪ジャジャジャジャーん!
と、
♪やまべさーん!
と、音の長さと配列が似ているからね。
ヒップホップマイルス
さて、話はマイルス。
マイルス・デイヴィスは、晩年にヒップホップ畑のミュージシャン、イージー・モービーとレコーディングをし、発表をすることなく亡くなってしまいましたが、マイルスの死後、しばらくたってから発売された『ドゥ・バップ』というアルバムがあるんですね。
「山辺さん」の旋律は、『ドゥ・バップ』一曲目の、《ミステリー》の旋律でした。
おそらく、マイルスは、《ミステリー》の冒頭の「あの旋律」は、ミュート・トランペットで軽く即興で吹いただけだと思うのですが、このサラッと吹かれて、さらっと哀愁の漂う旋律が、なんと、ベタッと汗ばむ夏の、ドロッと重たい修羅場で、多くの主婦を魅了した不倫ドラマ『昼顔』のもっとも印象的なテーマの旋律と似ているとは。
『昼顔』での旋律とアレンジは、ゴージャスで劇的感が漂っているので、クライマックスに持ってくるのにはもってこいの響き。
それに対して、マイルスのミュート・トランペットは、切なくはかない感じがする。
エコー(ディレイ)をかけているので、「切ない」気分も倍増。
まさに都会の夜に漂う、人々の心の中の乾きと、満たされぬことのない欲求をクールなトランペットで縁取っている、現代の《ラウンド・ミッドナイト》なのです。
『昼顔』の舞台は金沢八景が中心ですが、マイルスの《ミステリー》は、六本木や丸の内を舞台にしないと釣り合いが取れないでしょうね(いや、欲を言っちゃえば、本当はニューヨークなんですが)。
青木カレン
ちなみに『昼顔』のエンディングを歌っていた歌手は一青窈ですが、オープニングの《Never Again》を歌うのは、青木カレン。
彼女はジャズシンガーです。
ジャズのみにとどまらず、クラブ系などにも接近している、どちらかというと保守的ではないタイプのジャズシンガーのお方なので(私も一度、生で歌を聴いたことあります)、もしや、もしや、もしや、……ジャズを知らないクラブ系の人でもチェックしているであろうマイルス晩年の名盤『ドゥ・バップ』を知らないわけはない?!……と思うのですが、もしかしたら、パクったとは考えたくないのですが、マイルスが吹いた、トランペットの「あの4音」が頭から離れずに、別な曲が生まれたとか?
あ、すべて私の想像の翼が羽ばたいているだけです。
作曲者も知らないですし、ただ単に、「どっかで聴いたことあんなぁ」と長い間、ずっと思っていた曲が分かったという、ただそれだけの話です。
記:2015/02/15