ホレス・スコープ/ホレス・シルヴァー
お手てのシルヴァー
ブルーノートにしては珍しく、鮮やかな黄色とオレンジがインパクトのジャケット。
通称「お手てのシルヴァー」、正式名称『ホレス・スコープ』だ。
ニカの夢
このアルバムを代表するナンバーは、ラストの《ニカの夢》だろう。
この曲は、一度聴けば耳に残ってはなれないほど魅惑的な旋律だが、演奏する側としては気を抜けない適度な難しさがある。
しかもその旋律を、比較的速いテンポで演奏されているので、フロントはうかうか気を抜いた演奏が出来ようはずもなく、自然、熱気のはいった演奏となるために、聴いているほうも、演奏者たちの熱気が伝染し、次第に気分が高揚してくるのだ。
フロントは、ジュニア・クック(ts)とブルー・ミッチェル(tp)。厚みのあるアンサンブルを形成し、コンビネーションも抜群。グループとしてのまとまりもある。
ソロにおいては、とくにミッチェルの頑張りっぷりが素晴らしく、いくつもの魅惑的な旋律を放っている。
エキゾチックなマイナームードが続くが、ホレス・シルヴァーのピアノとなると、彼得意のポキポキ奏法ゆえ、ドライブ感はあるが、肉厚エキゾチック感は少々薄れる。
まぁ、それは他のどの曲においてもいえるが……。
ストローリン
個人的には《ニカの夢》よりも、《ストローリン》のほうが好みだ。
この悠々、堂々としていながら、ほのぼのさを感じさせる魅力たっぷりのメロディは多くのジャズマンが取り上げているが、誰の演奏もそこそこに聞こえるのは、やはり曲自体がよく出来ているからなのだろう。
ピアノソロ後半でロリンズの《セント・トーマス》を引用するシルヴァーもお茶目。
なかなか聴きどころ満載のアルバムだ。
なにしろ元気になれる。
記:1999/10/15
album data
HORACE SCOPE (Blue Note)
- Horace Silver
1.Strollin'
2.Where You At?
3.Without You
4.Horace-Scope
5.Yeah!
6.Me and My Baby
7.Nica's Dream
Horace Silver (p)
Blue Mitchell (tp)
Junior Cook (ts)
Gene Taylor (b)
Roy Brooks (ds)
1960/07/08-09