ハウス・オブ・ブルー・ライツ/エディ・コスタ
独創的過ぎ夭折ピアニスト
私にとっての「おっかねぇピアノ」の筆頭は、『マネージャングル』のデューク・エリントンだ。
これは、別冊宝島913『JAZZ“名曲”入門!』の《キャラヴァン》評でも書かせていたが、とにかく、まるでピアノが悲鳴を上げているような“バシン・バシン”といった音塊がたまらない。
そして、それと負けず劣らずが、私が「おっかねぇピアノ」と感じているのが、トリスターノの「怨念ピアノ」。
別に誰に対して怨念を抱いているというわけではないんだけど、トリスターノのピアノにはなんだか青白い妖気が漂っているのだ。
冷たい肌触りと、超高温だと推測される内面の葛藤。この温度差と眩暈を起こすようなフレーズとノリにはかなり怖しいものを感じてしまう。
他にも、デニー・ザイトリンとかヤンシー・キョロシーやミシャ・メンゲルベルグのような、「キレたヨーロッパ人」のピアノも「おぉ、怖ぇ」とニヤニヤしながら聴くのも変態チックな愉しみのひとつだが、おっと、忘れてはいけない、もう一人思い出した。
この人を忘れてはいけませんね、エディ・コスタ。
ピアニストであると同時にヴァイヴ奏者でもある。
むしろ、ヴァイヴ奏者としての仕事のほうが多いくらいの人だったが、彼のピアノはものすごく独創的であることは間違いない。
いや、独創的過ぎ。
だから、ヴァイヴ奏者としての仕事依頼が多かったのかも。
そういった意味では、徹頭徹尾ピアノに徹した本作『ハウス・オブ・ブルー・ライツ』は非常に貴重な記録といえる。
なにせ、コスタはリーダー作を5枚出しているが、ピアノ・オンリーのリーダー作は、あとにも先にもこれ1枚こっきりなんだから。
そう、わずか31歳で夭折してしまったピアニストなのだ。
こういう硬質でおっかねぇピアノ大好き。
音色に関しては、トリスターノのような硬さを感じる。
フレーズのほうも、脈絡がありそうで、なかったり、あったり。
頭が良すぎる人の、思考が4回り半をした、常人には及びもつかないモノローグを聴いているようでもある。
ポツリポツリと意味ありげな言葉を吐いたかと思うと、一気に長いセンテンスでセリフをまくしあげ、そうかと思ったら突然黙り、あるとき突然フレーズが叫びだす。
これを味わえるのは、なんといってもタイトル曲。
長めの演奏の中、たっぷりとコスタのピアノの「ヘンっぷり」を味わえる。
是非是非、このヘンだけど、なぜかとても気持ちの良い感覚を味わって欲しい。
クセになりますよ♪
そういえば、山中千尋も時折、低音でゴリゴリとシングルトーンを弾きまくる演奏があるが、その音の佇まいはトリスターノ的でもありながらも、どこかエディ・コスタを彷彿とさせるものもある。
あまりメジャーなピアニストではないが、いわゆるミュージシャンズ・ミュージシャン的な存在なのかな?コスタは。
コスタのピアノは、山中千尋や大西順子など、意外にも日本人の女性ピアニストにも影響を与えているのではないかと最近は感じている。
記:2003/11/20
album data
THE HOUSE OF BLUE LIGHTS (Dot)
- Eddie Costa
1.The House Of Blue Lights
2.My Funny Valentine
3.Diane
4.Annabelle
5.When I Fall In Love
6.What's To Ya
Eddie Costa(p)
Wendell Marshall(b)
Paul Motian(ds)
1959/01/29,02/02