イン・ザ・プール/試写レポート
2018/08/13
遅効性ギャグ
けっこう面白かったです。
この映画の特徴は、1秒か2秒後に、クスッと笑わせる絶妙な時間差ギャグが連発されているということ。
もっと分かりやすく言うと、「北斗神拳」ですな。
笑いの経絡秘孔を突かれたら、数秒後に「あべし!」が襲ってくる。
遅効性のギャグなんです。
シュガーベイブの《ダウンタウン》
でもさ、こういうユル目のギャグってさ、ともすれば、見ている瞬間は面白いんだけれども、見終わってしばらくすると、「うーん、結局なんだったんだ?」と、そのとき面白かった記憶が風化しやすい危険性を秘めている。
でも、風化させずに、この映画の面白さを真空パックで封印してくれる音楽がラストに流れてくれたんですね。
そう、シュガー・ベイブの《ダウンタウン》。
♪ダウンタウンへくりだそう~
のアレです。
うーん、やっぱりいいメロディ。
素敵な曲だわ。
私は、昔、EPOのカバーを聴いて、
♪だんだん栗ましょー
と歌っていたが……。
アホですね。
ちなみに、うちにあるEPOの《ダウンタウン》は、『ゴールデン・ベスト』で聴いています。
というか、他の曲はほとんど聴いてなくて、《ダウンタウン》しか聴いていない。
「ド80年代」ですな♪
で、話もどして『イン・ザ・プール』のラストに使われていたシュガーベイブの《ダウンタウン》ですが、やっぱりいいメロディ、素敵な曲だよね。
ギターのカッティングも凄くカッコイイぞ!
これがラストのクレジットに流れてくれたからこそ、『イン・ザ・プール』という映画の、面白さや、そこはかとなく痒くて気になるシーンが記憶の中に凝結されるんだと思いました。
まるで、絵を描いたあとに、スプレー糊をシューッと吹くようにね(ちなみに私はプラモデルを完成させたら、最後につや消しのクリアラッカーをシューッと吹きますが、ま、それはあまり関係ないか)。
うーん、ズルイ!
いや、別にズルくはないかもしれないけどさ。
うーん、ニクい!
いや、別にニクいものは何もないんだけどさ。
でも、やっぱり《ダウンタウン》効果はデカい!
で、久々に思わぬシチュエーションで耳にした《ダウンタウン》だったもので、急に懐かしくなって、家に帰って久々に取り出して聴いたものです。
シュガー・ベイブの『ソングス』。
うーん、《ダウンタウン》もいいけど、他の曲もいい。
山下達郎の原点ですな。
もちろん今の達郎氏もいいけど、この頃のヤマタツ氏は、良い意味で荒々しく、生き生きとして、今のようなプロフェッショナルっぽさが希薄で、もうちょっと青々しくて勢いがあり、ちょっぴり恥ずかしくてキュートな感じさえしてしまう。
ちなみに、このアルバムは、大滝詠一の「ナイアガラ」レーベルの第一弾のアルバムで、松任谷、じゃなくて、荒井由美も参加しております。
日本の現在につながるポップスの原点ともいうべき素敵な要素が満載ですね。
大貫妙子の歌声も素敵だわ。
映画も曲も遅効性
で、肝心なこの映画の話ですが、この映画の主人公は、しょーもない精神科医。
彼を演じるのは松尾スズキ。
うーん、ピッタリ、ハマリ役!
個性あふれる精神科に通う患者役を演じるのは、オダギリジョー、市川美和子、田辺誠一。
うーん、彼らもいい味出している!
特に、オダギリージョー演じる、勃ちっぱなしの患者というのは彼の新境地か?(笑)
こういう、情けなやな役もハマってますね。
昔、小倉で一緒にカラオケした、MAIKOちゃんも、大人っぽくなったなぁ。
セクシー看護婦という役で、ブスっと終始不機嫌な表情で、松尾スズキの後ろに立っている、注射好きの看護婦を演じています。
そしてドタバタ、いつの間にか物語終了。
そして、流れる《ダウンタウン》。
この曲はミスマッチなようで、その実、ベリーマッチな不思議さよ。
鑑賞してから数時間後には、「この映画にはこの曲以外ありえなかったのだ!」と思ってしまうのだ。
やっぱり遅効性な効果は、北斗神拳的ではありますな。
観た日:2005/02/15
movie data
原作:奥田英朗
脚本・監督:三木聡
出演:松尾スズキ、オダギリジョー、市川実和子、田辺誠一、ちはる、戸田昌宏、江口のりこ、真木よう子、藤田陽子、中村優子、MAIKO、きたろう、松岡俊介、森本レオ、三谷昇、田中要次、鈴木一功、木下ほうか、綾田俊樹、嶋田久作、ふせえり、岩松了 ほか
初夏、テアトル新宿、シネセゾン渋谷にて上映予定。
記:2005/03/10