インフォーマル・ジャズ/エルモ・ホープ

      2021/02/09

ホープ色薄し、されど

たまたまエルモ・ホープ(p)がリーダーとなっているが、極論すれば、リーダーは誰でも良かったのかもしれない。

そのあたりはトミー・フラナガン(p)の『ザ・キャッツ』と同じだね。

いや、トミフラのキャットのほうが、まだ「トミフラ色」は出ていたかもしれない。
なぜなら、彼の代表ナンバーの《エクリプソ》が演奏されていたり、ピアノトリオで演奏されたナンバーも収録されているから。

>>ザ・キャッツ/トミー・フラナガン

しかし、このアルバムはというと?

もちろん、1曲目、3曲目はエルモ・ホープのオリジナルではあるけれども、やはり、ドナルド・バード(tp)にジョン・コルトレーン(ts)にハンク・モブレイ(ts)にと、3人もの強力な管楽器奏者が参加しているためか、どうしても、管楽器主体の演奏に聴こえてしまうゆえ、ホープ色は薄く感じてしまうことはいたし方の無いことか。

プレスティッジ的ハードバップアルバム

このアルバムは、プレスティッジ・レーベル特有の発想でレコーディングされた録音ともいえ、それがプレスティッジというレーベルが醸し出すモダンジャズのアルバムの魅力といえば魅力なのだともいえる。

スケジュールがそろうジャズマンを集めてスタジオイン。
リハはそこそこ「せーの!」で録音。
はい、一丁あがり!

モダンジャズ全盛期の実力者揃いなので、もちろん演奏は悪くはない。

ま、ブルーノートのように、もう少し時間をかけて練習をすれば、もっと良い仕上がりになるのだろうけど、まあこのレベルでもまったく問題ないでしょう。

で、リーダーどうする?

ホープでいいか、じゃあ決定。
エルモ・ホープがリーダーのアルバムね。

はい、皆さん、本日はおつかれさま、今日のギャラだよ、日払いだよ、ブルーノートは小切手払いだけどね……。

実際のところはどうだか分からないけれども、おおよそがこういう流れで録音され、発売されたのではないかと。

なので、エルモ・ホープのエルモ・ホープらしさが前面に出ているとはいいがたい。

しかし、だからといって悪い演奏内容なのかというとそうでもないところがプレスティッジレーベルのアルバムの面白いところ。

つまり、モダンジャズの全盛期でありターニングポイントでもある1956年の空気を切り取った貴重なドキュメントともいえるし、個々のジャズマンの素晴らしい演奏を真空パックしてくれているという点では大いに評価できる。

参考記事:ジャズ1956年(日本は昭和31年)

《ポルカ・ドッツ・アンド・ムービームス》のドナルド・バードのブリリアントなトランペット良し。

マイルスのクインテットに所属し、ぶりぶりと急速に成長中のコルトレーンのテナーの勢い良し。
モブレイのテナーも、後年の滑らかでソウルフル、メロディアスなソロよりも、バップの香が漂い、なかなか瑞々しい。

管楽器奏者3人の勢いに乗った瞬間がたしかに刻まれている。

エルモ・ホープのピアノをじっくり味わいたい向きは、ブルーノートのトリオのほうが良いでしょうね。

このアルバムは、ホープ、ならびに当時のジャズの第一線で活躍していた旬な連中たちによるフレッシュな演奏が収録された「ドキュメント:1956年の日常的ハードバップ風景」として楽しむと良いのではないかと思う。

記:2019/05/22

album data

INFORMAL JAZZ (Prestige)
- ELMO HOPE

1.Weeja
2.Polka Dots and Moonbeams
3.On It
4.Avalon

Elmo Hope (p)
Donald Byrd (tp)
John Coltrane (ts)
Hank Mobley (ts)
Paul Chambers (b)
Philly Joe Jones (ds)

1956/05/07

YouTube

動画でもこのアルバムについて語っています。

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