【ネタバレ注意】映画イニシエーション・ラヴ「たっくん」の描かれ方が気になる

   

公開間近

●映画のネタバレはこちら⇒映画『イニシエーション・ラブ』感想~2人の「たっくん」を映画はどう表現したのか【ネタバレ注意】

う~む、「たっくん」は、どう描かれるのだろう?

あ、映画版『イニシエーション・ラヴ』の話です。

乾くるみの小説『イニシエーション・ラヴ』、主演が前田敦子、松田翔太で実写映画化されることは知っていましたが、いよいよ公開が間近に迫ってきています。

ネタバレ注意!

【注意】
ここから先はネタバレ含むので、原作をお読みではなく、「ラスト3行」に驚き、2度読みたい!と考えている方は、読まないでくださいね。

映画のうたい文句が「実写化不可能」

たしかにその通りだと思います。
小説のとおりに描くのであれば、ね。

だって、「2人の別の人間」を、「同一人物として」描かなければならないから。

もちろん、小説どおりに実写化すれば、の話ですけどね。

本当の主人公は?

どういうことなのかというと、

以下ネタバレ注意

作品は「ぼく」という一人称で書かれていますが、結局は、この物語の主人公は、女の子(映画だと前田敦子)です。

最初から最後まで登場しつづけますから。

この女の子が、2人の男と付き合う、誰もが経験するようなありふれた恋愛話が『イニシエーション』という作品なのです。

一言でまとめてしまうとね。

mimimoto

ベタな恋愛イベント

教科書どおりというか、判で押したかのような「恋愛イベント」の流れ。

・合コン

・グループ交際

・デート

・遠距離恋愛

・浮気

・妊娠

・中絶

・失恋

……などといった、かつての「携帯小説」ばりに、典型的な「恋愛イベント」が律儀なほどに登場しますからね。

これらを通過する通過儀礼=イニシエーション、というわけなのでしょう。

意図的に逆転させた時系列

しかし、この小説の面白さは、これら一連の流れの時系列を一直線に進ませず、恣意的に前後逆転をさせているところに妙味があるんですね。

2番目に付き合った男性の話を「A面」として前に持ってきて、最初に付き合った男性との話を「B面」として後に配列している。

もっと具体的に言えば、物語を

1986年⇒1987年

と描かずに、

1987年⇒1986年

と描いているから、読んでいて途中で「あれっ?」と気付くわけなのです。

つまり、以下の時系列のラヴストーリーとなるわけなのです。

1987年(次の男)⇒1986年(最初の男)

そして、そのことに関しての断りや言及がないままストーリーが進むので、普通に読んでいたら、読者は、書かれた時系列の順番で物語が進んでいると勘違いし、物語の後半あたりで、「なんかタッくん(主人公)の性格が豹変しすぎてない?」と、少しずつ訝しく感じはじめるのです。

私も、まさにそのパターンでしたね。

80年代に育った人ならピンとくるかも

もちろん、作者は、小説のいたるところに、時系列が逆転しているのだというヒントを散りばめてはいるのですが、80年代をリアルタイムに生きた人でないとなかなか実感が沸き辛く、気付きにくいんじゃないかと思います。

私の場合は、おそらく、この小説が描かれた時期が中学生か高校生ぐらいの年齢でしたので(ホンダの「シティ」がマッドネスのCMとともに売り出されてナウかったのがこの時期ですから)、物語後半「B面」の前半あたりで、「ああ、これは名前が同じだけの別人だな」と気が付きましたが、おそらく80年中盤以降生まれの人だと、なかなか実感が沸きづらいものだと思います。

二度読みたくなる理由

そして、この小説の最大の売りでもある「二度読みたくなる」理由は、小説のイベントすべてを理解した上で、もう一度「知った上での目線」で、彼女の恋愛話をなぞりたくなるからでしょう。

きっと、2度目の感想がまったく変わってくることでしょう。

私は恋愛話としてはアリキタリ過ぎるので(そこがイイという人にとってはイイのでしょうが)、2度読みはしていませんが、

たとえば、

「便秘の手術で入院してたからデートNG」

が、本当は、

「中絶手術で入院するからデートNG」

だったのね!とわかる面白さがあるのが2度目の読書なんじゃないかと思います。

前田敦子は適役だと思う

それにしても、名前の違う男が2人登場するこの物語。

呼び名は一緒でも、顔は違うわけだから、このあたりを、映像ではどう表現してくれるのか。

そのあたりが私はとても気になっています。

松田翔太が一人二役を演じる?

うーん、それには無理があるような気も。

だって、違う男と付き合うにしても、別れた男と同じ顔の男と付き合いたいですかね?

そのあたりは『TRICK』や『SPEC』を手がけてきた堤幸彦氏のことだから、このあたりは上手に演出してくれると思います。

あるいは、小説とは内容が大幅に変わっている可能性もアリですからね。

あと、もうひとつ、映画のほうは現段階では未見ゆえ、実際映画ではどのようなキャラで描かれているのかは分かりませんが、前田敦子は適役!だと思います。

小説だけからの印象だと、主人公マユは、

・ブスではないが、どちらかというとパッとしないタイプ(少なくともキャピキャピ派手ではない)

・なかなか計算高い

・何気に、いや、結構したたか

・最初の失恋で、ちゃっかり恋愛の駆け引きを学習している

……というようなイメージなんですが、私の中のあっちゃん像と見事に合致しまくっているのです。

とにもかくにも5月の公開が待ち遠しいですね。

記:2015/03/15

2人の「たっくん」はどう映像で表現されたか

映画、観てきました。

なるほど、あの「たっくん」と、この「たっくん」を同一人物に思わせるには、こういう手があったんだ!と思いました。

目からウロコでした。

詳しくは、別記事に書きましたので、そちらのほうがご覧になってください。
>>映画『イニシエーション・ラブ』感想~別人「たっくん」を映画はどう表現したのか

記:2015/05/25

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