ジェイ・アンド・カイ/J.J.ジョンソン & カイ・ウィンディング

      2021/02/16

低音域の見事な調和

トロンボーンは低音域を担う管楽器。だから、2本のトロンボーンがコンボの中で演奏をすると、どうしても音域がぶつかってしまいがちだ。

もちろん、ビッグバンドのような大所帯でのアンサンブルでは、同じ音域を複数のトロンボーン奏者が奏でることによって、サウンドに厚みを持たせることが出来る。

しかし、少人数のコンボ編成で、トロンボーン奏者2人の個性をそれぞれ際立たせるには、それなりの仕掛けやアレンジが必要であることは言うまでもない。

低音域といえば、ベースも低音域の楽器だが、私が好きなベースのアルバムにニールス・ペデルセンとサム・ジョーンズという、個性がまったく異なるベーシストが共演した『ダブル・ベース』というアルバムがある。

>>ダブル・ベース/ニースル・ペデルセン&サム・ジョーンズ

このアルバムにおいても、2人の低音奏者の役割分担は、曲ごとに考えられていて、片方が高音域でメロディを奏でている間は、もう片方のベーシストが低音域で伴奏を担っていた。

ペデルセンは高音域のハイポジションも縦横無尽に奏でることが出来るテクニシャンである一方、サム・ジョーンズの場合は、主に低音域で味のあるフレーズを繰り出すタイプのベーシストであるため、サム・ジョーンズが低い音域でメロディを奏でている場合、ペデルセンはハイポジションの高音域で和音を奏で伴奏をしている曲もあった。

このように、片方が高音域、片方が低音域と、奏でる音域を分散させることにより、同一音域による衝突を避けることが、低音楽器のコンビにおけるアンサンブルの基本だが、カイ・ウィンディングとJ.J.ジョンソンのコンビの場合も、同様の手法で、飽きのこないアンサンブルと演奏を放っている。

たとえば、片方がミュートをつけることによって音域を上げる方法や、一人が細かなフレーズを吹いている間は、もう片方はロングトーンや、長めの音符を吹くなど、様々な工夫がなされている。

安定したクオリティ

レコード会社の企画によって誕生したこのコンビではあるが、両人とも卓越したテクニックの持ち主である上に、アレンジの才能もあり、そして自分自身の楽器の特性と、相手の持ち味を熟知した上で繰り広げる演奏ゆえ、演奏されるどの曲もクオリティが高い。

一見、地味な管楽器コンビではありながらも、多くのリスナーから人気を博していたのは、彼らの優れたアンサンブルと演奏力の賜物だろう。

J.J.とカイのコンビのアルバムは、どれをとっても水準以上の出来のため、どのアルバムもおすすめだが、やはりコンビ結成後の初録音である『ジェイ・アンド・カイ』から飛び出す瑞々しい息吹きが、やはり格別なものだと感じる。

最初のレコーディング・セッションと、約7年後の音源も加えられ、それに伴い、参加ジャズマンも曲によって異なるが、そんな変化は、彼ら2人の前では、まったく取る足らないことだといわんばかりの安定したクオリティ。

今後は、この2人のような人気と実力を兼ね備えたトロンボーン・コンビって生まれないんだろうなぁ。

記:2015/08/22

album data

JAY AND KAI (Savoy)
- J.J.Johnson & Kai Winding

1.Bernie's Tune
2.Lament
3.Blue's For Trombones
4.The Major
5.Yesterdays
6.Co-op
7.Reflections
8.Blues In Twos
9.What Is This Thing Called Love
10.Speak Low

J.J.Johnson (tb,arr)
Kai Winding (tb,arr)
Leo Parker (bs)#5
Billy Bauer (g) #2,3,4,9
Wally Cirillo (p)
Hank Jones (p) #5
Lou Stein (p) #10
Charles Mingus (b)
Al Lucas (b) #5
Eddie Safranski (b) #10
Kenny Clarke (ds)
Shadow Wilson (ds) #5
Tiny Kahn (ds) #10

1947/12/24
1954/08/26

 - ジャズ