ジェイ・ホーク・トーク/カーメル・ジョーンズ
あの名盤にも参加
もっと聴かれてほしい、もっと評価されてしかるべき名トランペッター、カーメル・ジョーンズ。
「ん? 誰だっけ?」と、一瞬、頭の上にクエスチョンマークが浮かんだ人は、ホレス・シルヴァーの『ソング・フォー・マイ・ファーザー』のトランペッターだよ、と言えば、「ああ、そうだった」と「あの音」思い出すかもしれない。
そう、端整な音色に、メリハリのあるフレージング。
まさに正統派ハードバッパーと言っても過言ではないスタイルの持ち主なのだ。
地味なジャケットだが……
一時期は「クリフォード・ブラウンの再来」とも言われたカーメル・ジョーンズは、たしかにメロディアスでよく歌うトランペッターだ。
ま、第一印象は地味なんですけどね。
よく聴かないと、なかなか彼の良さって染みてこないこないかもしれない。
くわえて、『ジェイ・ホーク・トーク』の場合、ジャケットも地味だ。
寒色系の色(ファミリーマート?!)が配色されたタイポグラフィに、斜め後ろ姿の彼の白黒写真だからね。
というより、ジャケ写をみると一瞬テナー奏者のアルバムかと勘違いしそうだけど、手前のテナーサックス奏者は、このアルバムで共演しているジミー・ヒース。
リーダーがトランぺッターなんだぞ、ということを主張していない(あるいは分かりにくい)ところも、なーんか地味。
ローレンス・マラブルの『テナーマン』ほどではないけれど。
しかし、一曲目の《ジェイ・ホーク・トーク》から入魂のジャズロック!
「俺だって《サイドワインダー》リー・モーガンぐらいになれるんだぜ」といわんばかりのトランペットだ。
しかし、最初のこの勢いのある1曲が、逆に時代を感じさせる打ち上げ花火的なものを感じさせるのかもしれない。
一回聴いたら、「ああ、これも当時流行したジャズロック路線ね」と分かった気分になってしまい、長らくCD棚の隅に追いやられて、アルバムの存在自体も忘れられてしまう可能性の高い1枚なのかもしれない。
ま、そんな雑な接し方から第一印象を抱いてしまったのは私だけなのかもしれないが……。
目玉は2曲目以降にあり
しかし、正統派ハード・バッパーとしてのジョーンズの真髄は2曲目以降にある。
もちろん、ジャズロック調のタイトル曲の演奏だって悪くはない。
しかし、時代や流行に関係なく、いつの時代に聴いても「いいな~」と思わせる演奏が並ぶのは、2曲目の《柳よ泣いておくれ》や、3曲目の《恋とはなんでしょう?》だったりするのだ。
いわゆる手垢のついたスタンダードナンバーではあるが、こういう聞きなれた曲の演奏を聴くほうが、カーメル・ジョーンズというトランペッターの奇を衒わない誠実な演奏姿勢がよく分かる。
コーヒーでも飲みながら、じっくりと鑑賞したい。
なかなか聴かせてくれます。
じわりと染みる黒さ
主役のカーメル・ジョーンズはもちろんのこと、このアルバムが持つ「いぶし銀」的な良さは、共演者のリズムセクションにもある。
ベースのジョージ・タッカーを筆頭に、ピアノがバリー・ハリス、テナーがジミー・ヒースと、じわりと黒い人たちが多いのだ。
テナーのジミー・ヒースは、インパクトという点においては、コルトレーンやロリンズらを筆頭とする同時代のテナーサックス奏者よりは劣るかもしれないが、じつに味わい深い良いテナーを吹くサックス奏者であることに変わりはない。
ジョーンズとヒースという2人の管楽器奏者。二人とも「主張しすぎない」、しかし「言っていることはオーソドックスだが正しい」語り口のホーン奏者ゆえ、非常にバランスの良いコンビネーションを味わうことが出来、なおかつ職人的なリズムセクションの丁寧なサポートがハードバップ好きにとっては滋味あふれる耳の栄養となるのだ。
記:2018/01/21
album data
JAY HAWK TALK (Prestige)
- Carmell Jones
1. Jay Hawk Talk
2. Willow Weep For Me
3. What Is This Thing Called Love?
4. Just In Time
5. Dance Of The Night Child
6. Beepdurple
Carmell Jones (tp)
Jimmy Heath (ts)
Barry Harris (p) #2
George Tucker (b)
Roger Humphries (ds)
1965/05/08
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