ホェン・サニー・ゲッツ・ブルー/チェット・ベイカー

      2021/11/07

緩いが、ほんわり胸を打つ

いきなり最初の数音からラッパの音がヨレているけど。

《イズント・イット・ロマンティック》のヴォーカルが今にも死にそうだけど。

ついでに、青寒いジャケットで、ラッパを吹いているベイカーの顔も死にそうだけど。

トランペットの音色は、往年の「張り」は感じられなく、どこまでも草臥れた感じだ。

緩い。

全体の印象は、かなり緩い。

おそらく、いや、ほぼ絶対だと思うが、チェットは、このレコーディングで、歴史に残る名盤を作ってやろうと意気込んではいないはずだ。

もしかして、レコーディング中は「クスリ中」で、ほどよく効いた感じの気持ちいい気分で、ほんわり緩んでいるとか?

でも、なぜだかほのかな暖かみを感じてしまう、このアルバムが好きなんです。

ラストの《ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ》。

まるで、言葉の無い切々たる独白を聞いているようで、胸が絞めつけられる。

わけもなく、涙がこぼれてしまう人もいるんじゃないだろうか。

気が付くと、心のすき間に、いつの間にかチェット・ベイカーの音が忍び込み、じわりとした感動をもたらしてくれるのだ。

記:2002/11/15

album data

WHEN SUNNY GETS BLUE (Steeple Chase)
- Chet Baker

1.Long Ago And Far Away
2.Here's That Rainy Day
3.Two In The Dew
4.I Should Care
5.Out Of Nowhere
6.When Sunny Gets Blue
7.Isn't It Romantic
8.You'd Be So Nice To Come Home To

Chet Baker (tp&vo)
Butch Lacy (p)
Jesper Lundgaard (b)
Jukkis Uotila (ds)

1986/02/23

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 - ジャズ