アット・ザ・ファイヴ・スポット vol.1 /エリック・ドルフィー
ザ・プロフェット
ラストの長尺演奏、《ザ・プロフェット》がとても良い。
ドルフィーの長いソロには、理屈抜きで、こちらの心の奥底を揺さぶる力がある。
不気味だと思われても仕方ないが、私はこの曲のドルフィーのソロはすべて“歌える”。
以前、京都にあるジャズバーの『ブルーノート』で、これをリクエストして、ドルフィーのアドリブにあわせて裏声で歌ったところ、ママやカウンター向こうの女の子たちにドン引きされたことも今となっては良い思い出だ。
それだけではなく、アグレッシブな《ファイヤー・ワルツ》は、ドルフィーはもちろんのこと、マル・ウォルドロンの執拗なリフレインも病みつきになる。
つまり、このアルバムは収録されている3曲すべてが良い。
ブッカー・リトル
このアルバムと出会って、もうずいぶんと長い年月が経過した。
最初はドルフィーの激しい咆哮の虜になっていたが、次第にブッカー・リトルの深く哀しい「蒼」色のラッパに心を奪われるようになってきた。
鋭角的な曲群を、憂いのある音色で彩るリトルのトランペットの、なんと深く澄み切っていることか。
ドルフィーが鋭角的に鋭くなればなるほど、リトルの叙情性が露わになる。
なんて素敵なコンビなのだろう。
しかし、このような素晴らしい演奏を繰り広げたコンボも、当時はまったく評価されなかった、
それを裏付けるように、このライブの時も含め、「ファイヴ・スポット」の客数はまばらだったという。
そして、間もなく解散。
翌々年にリトルは尿毒症で若くして死去……。
時代が彼らの音に追いつくのが遅すぎた。
記:2002/05/26
album data
At The Five Spot vol.1 (Prestige)
Eric Dolphy
1.Fire Waltz
2.Bee Vamp
3.The Prophet
Eric Dolphy(as & bcl)
Booker Little(tp)
Mal Waldron(p)
Richard Davis(b)
Ed Blackwell(ds)
1961/07/16