ルック・アウト・フォー・エヴァンス・ブラッドショウ/エヴァンス・ブラッドショウ

   

レコードのチリチリ・プチプチノイズが似合うピアノ

先日、中古レコード通販のサイトをなんとはなしにめぐっていたら、エヴァンス・ブラッドショウの『ルッキング・アウト・フォー・エヴァンス・ブラッドショウ』が2万5000円近くの価格で販売されていた。

レコードだとけっこう高いんですね。

でも、よくよく考えてみたら、このアルバムはレコードで聴いたほうが風情があるのではないかと思い始めてきた。

レコード独特の、あのプチプチとした「ぷちぷちノイズ」と合うピアノなんだよね、ブラッドショウのピアノは。

なにしろ、強いアタックの持ち主。

音圧強く、そしてタフな男のピアノが弾くピアノには、「ぷちぷちノイズ」がよく似合う。プチプチが気にならないどころか、むしろ彼の硬質なピアノの音を引き立てるのではないかとすら思えてきた。

ま、うちにはCDがあるから、レコードで買いなおさないとは思うけど(もっと安ければ買うかもだけど)。

フィニアス・ニューボーンと仲良し

このピアノトリオのアルバムを聴けば分かるとおり、エヴァンス・ブラッドショウは、なかなかの腕前、表現力の持ち主だ。

あのフィニアス・ニューボーンJr.と同郷のテネシー州のメンフィス出身。

さらに、フィニアスと幼い頃から交友があり、互いに切磋琢磨し合った仲だという。

だからなのか、時折アップテンポの演奏で垣間見せるフィニアス流の「両手ユニゾンメロディ」弾きは、フィニアスを彷彿とさせるところがある。

少々泥臭く、洗練されすぎていないところもフィニアスと似た共通点かもしれないが、やはりフィニアスのほうがもう少しスマートな感じもする。

才気走ったフィニアスのピアノを鋭利な刃物だとすると、ブラッドショウのピアノは鈍器。
鬼才という形容がふさわしいフィニアスに対し、ブラッドショウのピアノはどっしりと地に根っこを張っているかのようだ。

時に、棒っきれのように無骨な味わい。

堅実で「絶対にフェイクなんかで誤魔化さないぞ!」という潔さを感じさせる姿勢は胸がすく思いで、かつてバド・パウエルが暴走超特急のごときピアノを弾いた《ハレルヤ》も、ブラッドショウの手にかかると、アップテンポではありながらも、堅実、着実な急行列車に落ち着く。

これだけの表現力をもちながら、同郷のフィニアスのほうが有名になり、ブラッドショウのほうは「知る人ぞ知る」的な存在のまま埋没しているのはじつに惜しい。

このタフでガッシリとした作りのピアノトリオの味わいは分かる人には分かるはず。じっくりと耳を傾け、強く太いピアノの魅力を味わいたいものだ。

記:2019/06/06

album data

LOOK OUT FOR EVANS BRADSHAW (Riverside)
- Evans Bradshaw

1.Georgia on My Mind
2.Hallelujah!
3.The Prophet
4.Love for Sale
5.Coolin’ the Blues
6.Blueinet
7.Angel Eyes
8.Old Devil Moon

Evans Bradshaw (p)
George Joyner (b)
Philly Joe Jones (ds)

1958/06/09

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