ムーン・ビームス/ビル・エヴァンス

   


Moon Beams

難しいこをは考えずに浸ろう

最初の一音から最後の一音まで、味わい尽くしてやろうなんて気構えは間違っても起こさないこと。

心地よすぎて、寝ちゃうから。

あるいは骨抜きになったように惚けた表情になっちゃうから。

それほど、甘美な旋律と演奏が心地よいアルバムなのだ。

読書or考え事 80% 、
ムーンビームス 20% 。

このような意識配分が丁度良い。

読書に没頭しつつも、意識の2割はエヴァンス・トリオの演奏に。そして、ときどき、美しいフレーズにハッとなる。

このような、決して“満腹”を目指さない聴き方が、このアルバムを愉しむ極意だ。

もっとも私は、ピアノも良いけど、艶やかで濡れた音色のチャック・イスラエル奏でるベースに聞き惚れてしまうことが多いけど。

スコット・ラファロの死後、しばらく演奏から遠ざかっていたエヴァンスだが、約1年ぶりに吹き込んだ演奏。

チャック・イスラエルは、ラファロ後任の新ベーシストとしての参加。

時に眠くなるほど気持ちが良いのは、色気たっぷりのチャック・イスラエルのベースの賜物かもしれない。

彼はしばらくエヴァンス・トリオに在籍するが、じつは彼が参加しているスタジオ録音盤は、これと『ハウ・マイ・ハート・シングズ』の2枚のみだ。

スタジオで録音された演奏のうち、躍動的ナンバーを『ハウ・マイ・ハート・シングズ』に、耽美的なものを『ムーン・ビームス』にと2枚のアルバムに振り分けて収録されている。

マイルス・デイヴィスの同日の演奏曲を「動」の『フォア・アンド・モア』、「静」の『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』と分けて収録した発想と同じだ。

ジャケ写の女性は、ベルベット・アンダーグラウンドのニコ。

この気だるい、耽美的なヴィジュアルが、エヴァンストリオが繰り出す演奏内容そのものを雄弁に語っていると同時に、演奏そのものイメージを少なくとも2割は底上げしている。

とにかく、あまり難しいことは考えずに、美旋律と媚ハーモニーにまかせるままに酔い“痴”れましょうぞ。

記:2002/03/27

album data

MOON BEAMS (Riverside)
- Bill Evans

1.Re:Person I Knew
2.Polka Dots And Moonbeams
3.I Fall In Love Too Easily
4.Stairway To The Stars
5.If You Could See Me Now
6.It Might As Well Be Spring
7.In Love In Vain
8.Very Early

Bill Evans (p)
Chuck Israels (b)
Paul Motian (ds)

1962/05/17 #5
1962/05/29 #1,8
1962/06/02 #2,4,6,7

 - ジャズ