スピリチュアル・ユニティ/アルバート・アイラー

   

身体の底から絞り出される豊かな旋律

混沌とした中にも美しさがある。

アイラーと共振しているテナー・サックスの強烈なバイブレーションは、一聴、騒音に近い耳障りかもしれない。

しかし、丁寧に一音一音追いかけてゆくと、身体の底から搾り出される豊かな旋律が聞こえてくるはずだ。

肉声・肉体

彼のテナーのサウンドは、まるで、肉体の一部のようだ。

限りなく「肉声」に近いと思う。

その「肉声」は、口から発せられる「声」というよりも、内臓の呻き、細胞のざわめきが、そのままサックスを通してダイレクトに放出されているように感じる。

《ゴースト》のテーマの旋律の、なんと素朴で無防備なことか。

コルトレーンは、ヨーロッパでアイラーの演奏を聴いて、「ああいうふうに吹きたい」と言ったそうだが、己の内面をダイレクトに音として昇華させることの出来る、ある種「天然な」アイラーのプレイスタイルに憧れを感じたのだと思う。

どうでも良いことだが、個人的にちょっと気になるのが、《ゴースト:セカンド・バージョン》の演奏中に聞こえる「ピー」という音。

まるで、テレビの放映中に放送禁止用語を遮る音のようだ。

レコーディング中、なんらかのトラブルなのだろうか?

もっとも、このノイズがあっても、この演奏の音楽的価値が損なわれることはまったく無いのだが。

逆に、不思議な臨場感と、「ヤバさ」が強調されているようで、何度も聴いているうちに、このノイズも音楽の一部だとさえ思えてくる。

リズムセクション

この『スピリチュアル・ユニティ』は、アイラーのアメリカデビュー作品でもある。

ドラムのサニー・マレイのシンバルの刻み、含蓄溢れるゲイリー・ピーコックのベースも素晴らしい。

滅茶苦茶なようでいて、かなり考えられたプレイだと私は感じている。

記:2002/05/09

album data

SPIRITUAL UNITY (ESP)
- Albert Ayler

1.Ghosts :first version
2.The Wizard
3.Spirits
4.Ghosts :second version

Albert Ayler (ts)
Gary Peacock (b)
Sunny Murray (ds)

1964/07/10

 - ジャズ