ザ・ルック・オブ・ラヴ/グレース・マーヤ
歌も演奏も破たんなし。しかし、
うーん、音もいいし、歌も演奏もとにかく丁寧に、キチンと、破綻なくまとまっているんだけど、しかも、この破綻のなさは、まさに優等生的という言葉がピッタリで、しかも、優等生な上に、暖かくてフレンドリーなやわらかさも感じるんだけど、なーんか、ぜんぜん、ジャズっぽい雰囲気が漂ってこないのはどういうわけだろう?
クラシック畑の音大上がりの優等生が「たまたま」ジャズにもチャレンジしてみましたって感じ。
もちろん、「感じ」、ね。
私が受けたニュアンスはそんな感じ。
端正なクラシックを聴いている感じ
なんだか、ジャズ聴いているというよりは、クラシックギターの村治佳織の新譜を聴いているような気分なんだもの。
あ、もちろん誤解しないでほしいのは、私、村治佳織のファンよ。
デビュー時からチェックしているほどのミーハー(笑)。
つまり、綺麗に粒のそろった彼女の綺麗で破綻のないギターをまるでイージーリスニングをかけているときのような気持ちよさで聴くのが好きなんだけど、この、グレース・マーヤのヴォーカル、ピアノを聴いているときは、そんな感じ。
ジャズヴォーカルという文脈ではなく、あくまで、さわやかな「ミュージック」を聴いているという感覚なのです。
だから、綺麗な声、綺麗なアンサンブルを綺麗な音で聴けるという楽しみはあります。
実際、アレンジもよく練られているし、彼女の声にもまったく破綻がない。
まったくもって、優等生による模範演奏といえるだろう。
あまり、面白くないけど(笑)。
でもね、このアルバム、この音楽は、自分の感性に「ガツン!」とくるようなそういう感覚を求める類の音楽でもないし、きっと、送り手も、そんなこたぁ考えちゃいないだろう。
さわやかで、あっさり聞けて、ほどほどに「うーん、思ったよりはよかったかもね」。
こういう接し方が正解かもしれない。
しかし、このアッサリ、スッキリ、破綻のなさは、ある種、潔く、気持ちが良いこともたしか。
ケイコ・リーのようなトゥマッチなフェイクっぷりの痛さにアイタタタタタタとなるよりは、素直に、こちらのサウンドに、スッと入っていったほうが健全だと思う。
ことさら、ジャズだの、ジャズヴォーカルだのってことを意識しなければ、このアルバムは、育ちの良さが音ににじみ出いている上品な「ミュージック」だと思うし、あ、べつに皮肉じゃなくてさ、素直にいいミュージックをいい音といい演奏で楽しみたいという当たり前で健全な欲求には十分すぎるほど応えてくれることと思います。
レストランのBGM、カジュアルなバーでサクッとかけるにふさわしい音源でしょう。
決して嫌いではないよ。
でも、「ジャズヴォーカルのCDです!」と、人に奨めるのは、ちょっと恥ずかしい(笑)。
記:2007/10/22
album data
THE LOOK OF LOVE (Village Records)
- Grace Mahya
1. ザ・ルック・オブ・ラヴ
2. マイ・フェイヴァリット・シングス
3. ザ・ブルーヴァード・オブ・ブロークン・ドリームス
4. テネシーワルツ
5. リボン・イン・ザ・スカイ
6. ダニー・ボーイ
7. キャラヴァン
8. オルフェの唄
9. シックスティーン・トンズ
10. マイ・ウェイ
11. ユー・アー・ソー・ビューティフル
グレース・マーヤ(vo,p)
河野啓三(key)
小沼ようすけ、越田太郎丸(g)
須藤満(b)
坂東慧(ds)
宮崎隆睦(sax)
仙道さおり(per)