Lovefool -好きだって言って-/Dream Ami
2024/03/02
フェンダー→ヤマハ
フェンダーの音がヤマハの音に変貌!
Dream Amiの《Lovefool -好きだって言って-》を聴いた時の第一印象です。
ブルボン「おいしいココナッツミルク」のCMソングとに起用されているので、耳にした方も多いことでしょう。
E-GirlsのメンバーであるDream Amiがカバーした《ラヴ・フール》は、誤解を恐れずに言えば、スウェーデンでカーディガンズがフェンダーで録音した音源を、日本のミュージシャンがヤマハの機材でツルツルな感触でレコーディングし直したような、そんな感触なんですね。
フェンダーテイスト
もちろん、フェンダーとかヤマハというのは、私が抱いている楽器メーカーの音イメージの比喩です。あくまで私が勝手に思い込んでいるイメージではあるのですが。
とはいえ、カーディガンズのギタリストのピーター・スヴェンソンは、来日する度に、日本の中古楽器屋をめぐり、フェンダーのムスタングのヴィンテージものを探していたということを、随分前ですが私がよく通っていたお茶ノ水の「オールドギターガレージ」の方から聞いたことがあります。
ちなみに、ピーターは当時で、20本近くのムスタングをコレクションしていたそうなので、相当なフェンダリアンなのでしょうね。
私もよく考えてみたらベースという属性の楽器よりも、フェンダーというメーカーが持つ発想やプロダクツに漂い現れる風格が好きなのかもしれません。
だから、今考えてみれば、他のメーカーにも寄り道をしたことは多々あれど、やはり戻ってくるのは、フェンダーの音と肌触りなんですよね。自分が楽器を直接抱きかかえて弾くぶんには。
そういえば、スウェーデンのスタジオで手作り感覚の暖かさとフェンダーチックなニュアンスが漂うう、カーディガンズの2枚目と3枚目は本当に大好きで当時はよく聞いていたものです。
透明感あふれてポップ、リアルタイムで聴いていた当時は、「新しい」サウンド感じていたものの、デジタルの匂いが希薄で真空管の暖かみが感じられるのです。
踏襲されたベースライン
それはそうと、Dream Amiがカバーした《ラヴ・フール》なんですが、これ、悪くはないです。
ヤマハテイストよりもフェンダーテイストが好きな私ではありますが、ヤマハにはヤマハの良さがある。
「最良なオーソドックス」というような。
私はカーディガンずがサードアルバムの『ファーストバンド・オン・ザ・ムーン』に収録されていた《ラヴ・フール》が大好きで、特にベースラインにはしびれましたね。
だから、当時組んでいたバンドでも、ヴォーカルを始めメンバーの皆さんにお願いしてバンドのレパートリーに加えてもらったほど。
空間にしっかりと低音をひとつひとつ「置く」ようなベースラインがすごくセンスよく感じたし、自分でもあの曲調に合わせて、さりげなく楽曲の骨格と要点をビシッ!と突くようなベースを弾いてみたいと思ったからです。
おもに林檎ちゃん(椎名林檎)のコピーを中心に演奏をしていたバンドなんだけど、この曲のベースを弾いている時が一番楽しかったほどでした。
ベースラインはシンプルでツボを押さえていた反面、その隙間を埋めるドラムが忙しそうでしたけど。
で、Dream Amiがカバーした《ラヴ・フール》のベースラインは、嬉しいことにベースラインはカーディガンズのバージョンそのままなんですよ。
もうそれだけで、この曲のツボを押さえていると感じたもので、それだけで注目してしまいましたね。
なので、この曲がCMが流れてきた時は、「オヤッ?」となったものです。
もちろん、ニーナのように心の芯まで染み込んでくるほどの超個性的なヴォーカルではないにせよ、表面的な歌唱力は、ポップス的な視点から見ればかなりの優等生といっても良く、まったくもって欠点が見つからないという意味からも「巧い」ヴォーカルだと言えましょう。
この欠点のなさっぷり、つまりは隙のないクオリティっぷりもヤマハチックだったのかもしれませんね。
Dream Ami
プロモーション映像も見ましたが、個人的には金髪にした日本人女性ってあんまり好きじゃないんですが、彼女の場合はまったく違和感ないし、むしろ似合っている。歌っている時の表情、笑顔も「この人ならカーディガンズ歌ってもいいのかな?」と自然に思わせる空気がありますね(雰囲気はカーディガンズとは対極だけど)。
良くも悪くも現代風なアレンジとサウンド(特にサウンド)と、色鮮やかな映像がピタリとマッチしていました。
この曲がキッカケとなり、もっともっと若い世代がカーディガンズを知ってくれれば、そして願わくばカーディガンズのことを好きになってくれれば、私はそれで嬉しいのであります。
記:2016/11/15