ベーシスト、マーカスのセンスが光る2枚

   

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どちらかというと「フュージョン小僧」垂涎であろうマーカス・ミラーのソロアルバムの中で好きなものは、正直ない。
しかし、彼のことが嫌いなわけではない。

ベーシストとして、そしてアレンジャーとしての卓越したセンスを伺えるプレイはサイドマンとして参加したアルバムの中で光るものはいくつもある。

まずは、なんといっても復帰後のマイルス・デイヴィスのライブ、『ウィ・ウォント・マイルス』でしょう。

音数を節約したシンプルながらも存在感のあるプレイ。
そして、マイルスのグループの音空間の屋台骨を見事に構築している。

たしか、このときのマーカスは20歳に満たない年齢だったと思うが、ものすごいセンスの持ち主だったということがわかる。

早くも、帝王マイルスの新生バンドのサウンドにイニシアチブを握っているのだ。

マーカスの空間構築能力を楽しむのが『ウィ・ウォント・マイルス』だとすると、
彼のエキサイティングなプレイを楽しむアルバムは、なんといってもデヴィッド・サンボーンの『ストレート・トゥ・ザ・ハート』だ。

メタリックな音色で吹きまくるサンボーンもセクシーだが、彼を支え、なおかつ煽りまくるマーカスのプレイも白眉。
ついでにハイラム・ブロックのギターも最高。

この演奏の模様の映像も何度か見たことがあるが、モノクロ基調の映像がカッコイイ。
奮闘する若きマーカスの頼もしい姿を拝める。

やはり、彼はずば抜けたセンスとテクニックの持ち主のベーシストだということがよく分かる。

私はベーシストながらも、テクニック面だけを聴いて世のベース小僧が「お~すげぇ、おいらももっと練習しなくちゃ」とお決まりのセリフを発するような、ベーシストのベーシストのための音楽ってあまり好きではない。

あくまで、全体の音楽の構築に貢献するタイプのベースのほうが好きなのだ。

もっともパーシー・ジョーンズやミック・カーンは例外だけどもね。
彼らほどの個性の持ち主であれば、ベース中心に音楽が構築されてもいいとは思う。

しかし、この2人はあくまで例外で、やっぱりベースの本分を弁えた上で、なおかつキチンと主張をしているベースのプレイに惹かれる。

そして、先にあげた2枚のアルバムは、充分にそれを感じる素晴らしい内容だと断言できるのだ。

記:2000/01/18

 - ジャズ