スパークス!/メルヴィン・スパークス

2020-04-30

家や飲み屋の「灯」が恋しくなる

NHKの朝ドラ『あまちゃん』に《地元に帰ろう》という歌があった。

最初は「なんやこりゃ?」と感じたものだが、だんだんと「地元に帰りたい」という気持ちになってきたものだ。今住んでいるところが「地元」であるにもかかわらず。

それと同様、メルヴィン・スパークスの『メルヴィン!』(プレスティッジ)に収録されえいる《時さえ忘れて(アイ・ディドント・ノウ・ホワット・タイム・イット・ワズ》を聴くと、思わず「お家に帰ろう(帰りたい)」と思わせてしまう不思議な雰囲気がある。

たとえば、デザイン事務所など、音楽をかけることが許されているような仕事環境で、不意にこのナンバーが夕方に流れてきたとすると、「そろそろ仕事を切り上げて一杯飲みに行きたいな」とか、「家に帰って一杯やりたいな」というような気分になっちゃうんじゃないだろうか(結局酒かよ……)。

ようするに仕事場の照明ではなく、飲み屋や自宅の「灯り」が恋しくなるような、そういう気分にさせる雰囲気なんだよね、この《時さえ忘れて》は。

『メルヴィン!』は、ギタリスト、メルヴィン・スパークスが1970年にプレスティッジから出した初リーダー作だ。

『ホット・ドッグ』や『エヴリシングズ・アイ・プレイ・イズ・ファンキー』などのルー・ドナルドソンのファンキー路線のアルバムから知ったという方も少なくないだろう。

>>ホット・ドッグ/ルー・ドナルドソン

>>エヴリシング・アイ・プレイ・イズ・ファンキー/ルー・ドナルドソン

いなたいフレーズをしゃっきりと聴かせてくれるギタリスト。
キャッチ—だけれども腰のあるギタリスト。
フレーズの語尾はシャープだけれども洗練されすぎていない都会的だけれども、どこか土臭さも含んだテイストがたまらない。

フレージングに関しては、かなりグラント・グリーンの影響を受けていると思われる。
しかし、グラント・グリーンほどの「粘っこさ」のようなものは少なく、そこらへんが先述した「都会的な~」に通ずるところだろう。

彼の「いなたくしゃきっ!」を引き立たせているのが、レオン・スペンサーのオルガンだろう。

まさにソウルオルガンの代名詞と呼んでも差し支えないほどのプレイ。

腕のほうはというと、ジミー・スミスのような大御所や、ラリー・ヤングのようなユニークなアプローチをするオルガニストに比べれば、どことなく単調さを感じる箇所もあるかもしれない。

しかし、この良い意味での単調さ、心地よい反復と、ときおり強引にねじこまれる「ペンタトニック16分音符」が、ほろ酔い加減にアルコールの周った気分を心地よくマッサージしてくれるのだ。

スパークスのソウルフルなギターに華を添えております。

ダラダラ聴き大歓迎の心地よきソウルジャズの名盤といえましょう。

とにもかくにも《時さえ忘れて》だけでも聴いてちょ!

記:2014/04/05

album data

SPARKS! (Prestige)
– Melvin Sparks

1.Thank You
2.I Didn’t Know What Time It Was
3.Charlie Brown
4.The Stinker
5.Spill the Wine

Melvin Sparks (g)
Virgil Jones (tp)
John Manning (ts) #3&4
Houston Person (ts) #3&4
Leon Spencer (org)
Idris Muhammad (ds)

1970/09/14

ジャズ

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