熱いノリと、勢いにまかせすぎないクールな眼差しの両立~『モザイク』ジャズ・メッセンジャーズ
長らく活動の続いたアート・ブレイキーとジャズメッセンジャーズのどの時期が好きか? と問われれば、一瞬、返答に躊躇してしまう。
しかし、どの時期がもっとも音楽的に充実していたか?……となれば、私は迷うことなく、「ショーター在団時」と応えるだろう。
それも、ピアノはボビー・ティモンズよりも、シダー・ウォルトンがいい。
(もちろんティモンズ在団時も素晴らしいが)
そして、フロントは、トロンボーンのカーティス・フラーが加わった三管編成のときが良い。
重厚なアレンジも楽しめ、かつサウンドが変幻自在、そして知的な奥ゆきも感じられると同時に、演奏そのものも熱い。
トランペッターは、リー・モーガンのときと、フレディ・ハバードの時期があり、どちらのトランペッターもじつに見事な働きをしているのだが、このアルバムでは、フレディが参加している、『モザイク』が、メッセンジャーズの音楽的にも、演奏の熱さや勢いもあり、かつ、単に熱いだけではなく、どこか落ち着いた構造美もあり、これこそ、音楽監督・ウェイン・ショーターの名参謀っぷりが遺憾なく発揮された快作と呼ぶにふさわしいはないだろうか?
メッセンジャーズ18番の《モーニン》や、《ブルース・マーチ》のようなキャッチーでハデハデしい曲がないかわりに、そのぶん、1日に何度でも聴けてしまうコクのある旨みがある。
勢いにまかせすぎない腰の据わった演奏に、こちらもじっくりと腰を据えて鑑賞することができるのだ。
記:2000/06/14