ニューヨーク・イズ・ナウ/オーネット・コールマン
オーネット「らしさ」が凝縮されている
今をときめくテナー奏者、ジョシュア・レッドマンのお父さん、デューイ・レッドマンの“怪演”を楽しめるアルバムだ。
彼の「怪演」っぷりは、さすがのオーネットもかすんでしまうほどのインパクトだ。
まるで怪獣のオナラのようなテナー。
この音色は、“グロウル”と呼ばれる、サックスを吹きながら自らの声も出す奏法によるもので、彼に限らず、この奏法を用いるサックス奏者はいるにはいるが、彼ほど“オナラ度”の高い(?)音色を放出するテナーも珍しい。
プレイ面のインパクトにおいては、デューイに一歩譲るオーネットだが、このアルバムではむしろ彼の作曲を楽しめると思う。
オーネット“らしい”曲が満載、なんて書くと、じゃあオーネット“らしさ”とはナンだとなってしまうが、簡単に言ってしまうと、
無邪気・シンプル・素っ頓狂
の3拍子だと思う。
“ここ”にくると思っていた音が“あちら”に飛んでいってしまう、はぐらかされ感。
“結”の欠如した“起承転”な内容。
論理的とは言い難い、前後の整合性を念頭に入れない、“感覚一発”な音の跳躍っぷり。
つまり、一筆書き的なメロディなのだ。
絵に喩えてみると……。
使う線の数も色の数も極力簡素な絵。
どこか微妙に、あるいは露骨に、遠近感の狂った感じの絵。
受け手が不快感をもよおす奇抜さではなく、ちょっとの狂いが、構図がシンプルゆえに、妙に人の心に残ってしまう、そういった感じの絵だと思う。
他のジャズメンもよく取り上げている、《ブロードウェイ・ブルース》をはじめとして、不整合なフレーズがやがて一つのまとまった形に収斂してゆく様が気持ちの良い《ザ・ガーデン・オブ・ソウルズ》、中域でモゴモゴとした後、いっきに高音域に駆け上がるというオーネット流のメロディ感覚を味わえる《ラウンド・トリップ》など、オーネットのユニークなセンスで作られた曲を味わえる。
このようなメロディに躍動感を与えているのは、元コルトレーン・カルテットのリズム陣、エルヴィン・ジョーンズとジミー・ギャリソン。
彼ら強力なリズム隊が、重厚かつウネリのあるリズムを送り続けているのも、おおきなポイントだ。
記:2003/06/03
album data
NEW YORK IS NOW (Blue Note)
- Ornette Coleman
1.The Garden Of Souls
2.Toy Dance
3.Broad Way Blues
4.Broad Way Blues (alternate version)
5.Round Trip
6.We Now Interrupt For A Commercial
Ornette Coleman(as,tp)
Dewey Redman (ts)
Jimmy Garrison (b)
Elvin Jones (ds)
1968/04/29 & 05/07