音楽は自由にする/坂本龍一
2021/02/16
ワイルド教授・マイルド教授
小学校の頃より YMOに感化されて以来、もうずーっと一貫として私は教授のファンを続けているわけですが、だからこそ、そんな教授の自叙伝は貪るように読みましたね。
これの前の『Seldom‐illegal―時には、違法』も面白かったんだけど、こちらは自伝的要素がさらに増して、非常に興味深く読めましたね。
子どもの頃、一人でイカダを作って川下りをしていたとか、見かけによらず(?)ワイルドな人だったんですね、子どもの頃から。
そのワイルドっぷりは、高校生時代の学生運動(新宿高校をバリケード封鎖して、校舎の中の音楽室でドビュッシーを弾く)や、学生時代(飲み過ぎてケンタッキーのカーネルサンダーおじさんを家に連れて帰る)、それにスタジオミュージシャン時代(酔っぱらって帰る早朝、新宿にて、喫茶店のパフェなどの見本が陳列されている棚を醜いと感じて、ぶち壊した後、すぐにお巡りさんに職務質問をされて警察に連れて行かれた)などなどの武勇伝がある、なかなかに勢いのあるカッコいい人なのです。
YMO時代も細野さんと確執があった時期はスタジオのソファを蹴ったりしていたという噂もありますし。
この時折滲み出る暴力性(=エネルギー)があるからこそ、そのエネルギーが創作、表現に向けられた時には素晴らしい作品が生まれるのでしょう。
だから、私はそんな教授の暴力性が好き。
だから、『B-2 unit』を時代を超えて愛聴しつづけているのでしょう。
しかし、本書での語り口は、いつものことですが、非常にマイルド、かつ淡々と穏やか。
ライブのMCやラジオでもそうなんですが、教授は決して饒舌ではない。
でも、そのボソボソとした語りが、けっこう面白くて引き込まれてしまう。
この本は、まさに教授の語りが、そっくりそのまま活字になった感じがします。
だから、読んでいてとても面白いのです。
教授のお父さん
ちなみに、本書には触れられていませんが、教諭が最初に見た映画はフェリーにの作ひんだったんだってね。幼い頃だから内容は覚えていないそうですが、お母さんの膝の上で見た記憶があるのだそうです。
そんなことからもわかるように、本当、アカデミックな一家で育ってきたんだなと、とても羨ましくなってしまいます。
お父さんは、何と言っても三島由紀夫や野間宏ら名だたる作家を担当した伝説の編集者、坂本一亀氏というところもすごい。
お父さんの本も読みましたが、もう今の時代の編集者とは違う全然違いますね。
昔ながらの編集者というか、職業に対して頑固一徹職人という感じで、家にはほとんど帰らずに仕事一本って感じ。
ま、私も雑誌の校了日が近くなると、ほとんど家には帰っていませんでしたけど、なんというか、作品に対する気迫みたいなものが全然違うというか。
そんなお父さんの影響を受けたのか、受けていないのか、教授(坂本龍一)自身もかなりのこだわりの人で、それが彼の基本的な職業姿勢でなんでしょうね。
やっぱり遺伝なのか。
記:2009/09/15