オージー・イン・リズム vol.1/アート・ブレイキー
打楽器アンサンブルのアルバムを作りたい
若い頃にアフリカ旅行をしたアート・ブレイキーは、旅先で現地のリズムに魅せられた。
そして、複数のドラムとパーカッションで、それっぽいフレバーを表現出来ないものかと長年思案していた。
ブルースが大好きで、じつはリズムにも多大なる興味を持っていたブルーノートの社長、アルフレッド・ライオンも、ブレイキーの構想に共感。
この2人は長年、大人数編成の打楽器アンサンブルを録音する機会をうかがっていた。
そして、1957年の3月に実現したのが、この大人数のドラマーとパーカッショニストによるセッション。
タイトルは『オージー・イン・リズム』。
レコーディングされた曲は、『vol.1』『vol.2』と2枚に分けて収録された。
ブレイキーの幅広い音楽性
この日のセッションの翌日に、ブレイキーはジャズメッセンジャーズとして、別レーベルに『ミッドナイト・セッション』を録音している。
つまり、レギュラーの仕事のジャズ(メッセンジャーズ)は、仕事としてコンスタントにこなす一方で(決して手抜きという意味ではない)、自分自身の関心も追及しつづけていたということだ。
メッセンジャーズと打楽器奏者だらけのセッション。
両者を比較すると、音楽性がまったく異なるところが面白い。
しかも、1日違いでガラリと音楽の気分を変えて、両方ともプロの仕事をしてしまうブレイキーの音楽性の広さも特筆すべきだろう。
打楽器だらけ
先述したとおり、『オージー・イン・リズム』セッションの編成は、かなり特異。というか、スゴい。
ドラマー3人、ラテン・リズムセクションが5人。
ドンドコドンドコと、地に足のついた「打」が重たく中空を舞う。
圧倒的な迫力によるリズムの交感。
いや、打楽器奏者たちによる容赦なき乱痴気騒ぎというべきか。
レコーディングの場所は、いつものブルーノート御用達のルディ・ヴァン・ゲルダー・スタジオではない。
おそらくは、複数のドラム(ティンパニー含む)やパーカッションなどの楽器群は、いつものスタジオには収まりきらなかったのだろう。
したがって、収録はマンハッタンのホールで行われている。
土着的、かつプリミティヴなリズムの嵐は、ブレイキーが感じる「アフリカ」であるにもかかわらず、ときおり和太鼓の連打にも感じる瞬間もあるから面白い。
歌うブレイキー
とにかく、難しいことは考えずに大音量で聴こう。
腰のあたりがムズムズ、ユラユラしてくるから。
ちなみに、1曲目の《ブハイナ・チャント》のブハイナとは、アート・ブレイキーの回教徒名(アブデゥラ・イブン・ブハイナ)だ。ヴォーカルは、パーカッショニストのブー・マルティネス。
サブーは過去にもブレイキーと共演歴があり、『ホレス・シルヴァー・トリオ』の《メッセージ・フロム・ケニア》が有名だ。
3曲目の《トフィ》のヴォーカルは、ブレイキー。
『カフェ・ボヘミアのメッセンジャーズ』でのブレイキーのアナウンスはドスのきいたダミ声だが、この曲でのヴォーカルは、なかなかイイ喉を鳴らしている。
4曲目の《スプリット・スキンズ》は、ブレイキー、アート・テイラー、ジョー・ジョーンズのドラマー3人による共演だ。
ブレイキーのリズムの追求はここで終わらず、翌年の『ホリデイ・フォー・スキンズ』へと続いてゆく。
ちなみに、『ホリデイ・フォー・スキンズ』も、名盤『モーニン』の3日後のレコーディングだ。
どうも、ブレイキーは、メッセンジャーズの仕事と、「リズム追求音楽」の仕事の録音をする時期が重なりがちなようだ。
記:2009/06/27
album data
ORGY IN RHYTHM VOL.1 (Blue Note)
- Art Blakey
1.Buhaina Chant
2.Ya Ya
3.Toffi
4.Split Skins
Art Blakey (ds,vo)
Jo Jones (ds,tympani)
Charles 'Specs' Wright (ds,tympani)
Carlos "Patato" Valdes (congas)
Jose Valiente (congas)
"Sabu" Martinez (bongos,timbales,vo)
Ubaldo Nieto (timbales)
Evilio Quntero (concerro,maracas,tee log)
Herbie Mann (fl)
Ray Bryant (p)
Wendell Marshall (b)
1957/03/07