可愛いオーネット~『サムシング・エルス』のおススメ2曲
オーネットには珍しいピアノ入りのフォーマット
オーネット・コールマンのキャリアにおいて、ごくごく初期のアルバムが『サムシング・エルス』だ。
キャノンボール・アダレイの『サムシン・エルス』と、ほぼ同じタイトルで、「something」か「somethin'」かだけの違いですね。
オーネットが演奏するフォーマットには、ピアノが抜けたピアノレスであることが多い。
しかし、このアルバムには、ピアノが参加している。
オーネットにとってもっとも適した表現フォーマットが見つかる前の段階だったのか、あるいはプロデューサーがオーネットをどう活かすべきか分からず、とりあえずは従来のジャズの延長線上のフォーマット(クインテット)で録音しようとしたのか、それは分からない。
ともあれ、ピアノという、和音を奏でることによって、演奏の中における「その瞬間」のハーモニー、つまりは空気の色彩を大きく決定付ける楽器が参加したことにより、オーネットのサウンドから感じる独特の浮遊感はもちろんあるが、他の諸作と比較をすれば、地に足が着いた落ち着いた演奏に感じる。
おすすめ2曲
個人的には《ザ・ブレッシング》や《ザ・スフィンクス》という曲が大好きで、この2曲が聴けるだけでも、このアルバムは価値ある1枚だと思っている。
まるでおもちゃのような可愛らしいメロディ。
この2曲、取り上げているジャズマンも少なくないことから、ミュージシャン心をくすぐるサムシングがあるのでしょう。
後年のオーネットの曲にも、一筆書きのような可愛らしい曲が少なくないが、いずれにしても、オーネットのアルトサックスの音色と音程だからこそ映えるメロディラインですね。
『サムシング・エルス』では、上記2曲がおススメ曲ではあるが、オーネットが作る曲には、可愛い曲、あるいは素朴な曲が多い。
それがまた、彼の魅力のひとつでもあるのだ。
可愛いといえば、ジャケットのタイポグラフィ、特に、水色とオレンジの書体の文字も可愛い。
アクセント的にバランス良く配置されている、黒いフォントも良いバランスだね。
特に、十字架状になっている「THE MUSIC OF」が。
食欲、ではなく、「聴く欲」を駆り立てるジャケットのアルバムだ。
記:2013/03/28